妻と男の物語


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伯爵からの招待(4)

[5492] 伯爵からの招待(4) 角笛 投稿日:2008/12/04 (木) 02:46
8 セックスを禁じられた夫婦

 レオタード状のボディスーツを着用したまま冴嶋部長に全身をマッサージされ、玩具にされた美和は、快楽の虜と化していた。飲まされた美酒『快楽の虜』のまま、部長の愛撫を受け容れ、悦びの声を上げた。私も、口にした『服従の証』という酒のとおり、部長の命令には逆らえず、服従するしかなかった。
 情けなかった。目の前で愛する新妻が他の男にキスをされ、愛撫され、嬌声を漏らしているのを黙って見ている自分が情けなかった。そして、そのような状況に興奮し、勃起しているのが屈辱的であった。たとえ二週間を超える禁欲を強いられていたとしても……。
 美和の口のまわりや首筋、耳のあたりは冴嶋部長の唾液で淫猥に濡れていた。全身は、媚薬が混ぜられたローションと彼女の汗で濡れていた。とくに執拗に攻められていたアソコの回りは、他の部位以上にグッショリと濡れていた。ローションだけでなく、おそらく、美和の垂れ流した快楽のしるしで潤っていたものと思われる。それは、夫として屈辱的な光景であった。
 全身が火照り、放心状態の美和が回復するのを待って、私たち夫婦は冴嶋部長の部屋を辞した。口数少なく帰路を急ぎ、自分たちのマンションへとまっすぐ帰った。

 シャワーを浴びて寝巻きに着替え、寝室に入った。
「あなた……ごめんなさい。わたし……」
 美和が目に涙をためてそう言った。
「謝るのはボクの方だよ。今夜もボクは何もできなかった。美和を助けることができなかった。ただ、冴嶋部長のなすがまま、どうすることもできなかった……ごめん……」
 私は美和を抱き寄せてキスをした。でも、それ以上のことはできなかった。〝伯爵〟にかけられた呪縛はまだ解けていない。恐れや畏怖に心を支配され、それ以上のことは何もできなかった。美和も同様に動けないようであった。
 私たちは互いを見つめたまま、静かにベッドに入った。涙に濡れそぼった美和の瞳は、いつにも増して艶かしかった。口許の右のホクロは、いつも以上に淫らで妖しく私の目に映った。

9 甘い誘惑(第三夜)

 『快楽の虜』に支配された美和と『服従の証』を証明した私は、仕事のあと、今夜も冴嶋部長の家へと向かった。さまざまに錯綜した誘惑に逆らうことができなかったのだ。
 冴嶋部長はいつものように特別の酒をグラスに注ぐと、私たち夫婦に飲むよう手渡してきた。美和も私も、いつものように飲み乾した。あいかわらず美味い。芳醇な香りと甘味、適度な酸味、そして気分が高揚して心地よくなる感覚。
「今夜きみたちに飲んでもらったのは、『伯爵の花嫁』と『伯爵のしもべ』だよ。どうだい、なんとも言えない味だろ? いよいよ、そのときが来たんだよ。きみたちにも、キチンと役割を担ってもらわないといけないからね。あまり偉そうに言いたくはないのだけど、それぞれの立場をハッキリしておく必要があるからね。おかわり飲みながら、しばらく私の話を聞いてくれるかな?」
 冴嶋部長は私たちからグラスを受け取ると、おかわりをついでくれた。そして、自分も一口、酒を口にしてからおもむろに話し始めた。

10 〝花嫁〟と〝しもべ〟の立場

 第一段階も三日目の夜となると、きみたちもだいぶ慣れてきたことだろう。そろそろ、それぞれの立場をハッキリしておきたい。いいかい? 私たちの関係は、〝伯爵〟とその〝花嫁〟、〝伯爵〟とその〝しもべ〟だ。わかっているよね? 私たちだけのときは、互いに立場をわきまえた関係にしておきたいのだよ。これからは私のことを『〝伯爵〟さま』と呼んでくれたまえ。私は〝花嫁〟のことを名前で呼ぶときは『美和』と呼び捨てで呼ぶ。〝しもべ〟を名前で呼ぶときも同様に『佐伯』と苗字を呼び捨てで呼ぶ。わかったね、『美和』、『佐伯』。
 さて、今夜はいよいよ第一段階の仕上げの夜だよ。『禁断の果実』をひと口かじって、それを呑み込んだ感じ、と言ったらいいかな? なに? わかりいにくい? まあまあ、すぐにわかるから、安心してくれたまえ。
 それはそうと、以前に私が言ったことを憶えているかい? きみたちに究極の快楽を味わってもらう、と言ったこと。
 女にとっての究極の性的快楽は、『愛する男の目の前で、他の男にもてあそばれる』こと。
 男にとっての究極の性的快楽は、『愛する女が自分の目の前で凌辱されるのを、指を咥えてみているしかない』ということ。
 もうすでに、ある程度は体感してもらったわけだが、今夜はそれをかなりの部分まで経験してもらうよ。興奮するよ。気持ちいいよ。きみたちには、とことん、エッチになってもらうからね。淫らに悶えてもらうよ。淫乱でどうしようもない状態になってもらうよ。さあ、そのまま寝室の方に行こう!

<つづく>
  1. 2013/08/17(土) 15:18:28|
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伯爵からの招待(3)

[5446] 伯爵からの招待(3) 角笛 投稿日:2008/12/01 (月) 01:34
5 支配された日常

 冴嶋部長に命令されたとおりの日常が、今日も続く。
 昨夜は、美和が部長の唇で犯された。着衣のままではあったが、髪を撫ぜられ、舌をからめ合いながらのキスで唇の周りを唾液でレロレロにされながら、美和は悦びの声を上げた。耳をしゃぶらたときには、体をビクンと反応させて、部長の刺激を受け容れていた。
 私と美和は、同じ商企一課で仕事をこなしたあと、定時になると退社し、揃って部長のマンションに寄る。そして、命令・指示されるとおりの淫行を繰り返し――といっても、私は傍観しているだけだが――その日のプログラムが終了すると自宅へ帰る。
 今日も我々夫婦は、部長の待つマンションへと来てしまった。私も美和も、互いに言葉をかわすことなく無言でベルを押し、ドアを開けて部屋に入っていく。

「やあ、いらっしゃい。今夜は第一段階の二日目だね。まずはこれを飲んで、一服してくれたまえ」
 冴嶋部長は既に部屋着に着替えていた。グレイのスエットスーツだ。私と美和はグラスを受け取ると、琥珀色の液体を一気に飲み乾した。
「今夜は美和くんのボディチェックを行いたいから、これに着替えてもらえるかな? 全身をマッサージしてリラックスしてもらおうと考えているのだよ。さあ、どうぞ」
 美和は部長からピンクベージュの薄物を受け取った。伸縮性のある、かなり薄い素材でできたレオタードかボディスーツのように見えた。美和は布地の感触を確かめながら、バスルームへと消えていった。
「美和くんが着替えているあいだ、少し時間があるから私の計画について若干説明しておこうかな。佐伯くんにはしっかり憶えておいてもらわないといけないからね。今後も長きにわたってプログラムをフォローしていってもらう必要があるからね。ああ、美和くんには詳しく知っておいてもらう必要はないよ。そのときがくればわかるが、どうせ記憶していられないからね。説明しても無意味なんだよ。まだすべてを話すわけにはいかないが、ある程度のことは把握しておいてもらおうか」
 冴嶋部長は私に腰掛けるよう促すと、自分もソファーに深々と腰を下ろした。そして、次のことを話し始めた。

6 〝伯爵〟の計画

 私の一族には、人の心を支配する不思議な力があることを、このあいだ説明したよね。いつの頃にその力を手に入れたのか? 何故そのような力を得ることになったのか? 私も知らない。ひとつ確かなことは、私の一族の男にのみ、その力が受け継がれていくということだ。男系にのみ継承されていく能力のようなのだ。何故か、女には受け継がれない。
 自分にそのような力があることを知るのは、第二次性徴を迎えて、大人の体へと肉体的にも精神的にも成熟する頃のようだ。私もそうだった。ある日突然、自分が思うように他人をコントロールできるということに気付く。そして、祖先の記憶の一部が、自分の記憶として覚醒する。
 私の一族――男だけだが――は家族を持たない。法的な意味においてね。結婚という形はとらないから戸籍上の家族は存在しない。戸籍上のね。それが〝伯爵〟なのだよ。誇り高き〝伯爵〟の選んだ生きる道なのだよ。
 もちろん、遺伝形質を継いでくれる子孫は残す。だから一族が続いているわけだ。〝伯爵〟は〝花嫁〟と〝しもべ〟を選び、子孫を残す。今回の場合は、美和くんと佐伯くんだ。きみたちの役目はね、『私の血を受け継ぐものを懐妊し、生を与え、来たるべき覚醒のときまで大切に育てること』なのだよ。そして、新たな〝伯爵〟が、我が一族の末席に加わることになる。
 どうしたのかね? 顔が真っ青だよ、佐伯くん。きみは究極の快楽――愛する妻を目の前で弄ばれるという最高の快楽――を得る代償として、〝花嫁〟が懐妊する〝伯爵〟の子供を自分の子供として――戸籍上のことだが――庇護するための盾となるのだよ。それが〝しもべ〟の役割だ。驚いたかね?

 私だって、血も涙もないわけではないよ。きみたち夫婦から取り上げるのは第一子のみだ。〝花嫁〟は〝伯爵〟の子を出産した瞬間に、この件に関するすべての記憶を失う。いいかい、すべてきれいさっぱりにだよ。なんとも都合よくね。〝花嫁〟は、自分が生んだ子供は夫とのあいだの子だと信じ、疑うことがない。もちろん、血液型には注意したまえ。
 すべてを忘れた〝花嫁〟と〝しもべ〟――この場合、きみのことだが――は、セックスに励んで、第二子以降の子供を量産すればよい。どうだい? 〝しもべ〟思いだろ?

 あっ、そうそう。女の子が生まれた場合、能力は継承されないと言ったが、淫乱性は受け継がれ、成熟とともに覚醒する。フェロモンで男を惑わし、エロスの化身となる場合が多い。ちょっとエロイ女程度に留まることもあるようだが……。

 最後に、これが重要なのだが。我が一族の末裔――男――には、その名前のなかに『威』の文字を入れるのが慣例になっている。男の子を命名する際には、『威』の文字を含む名前となるよう忘れないでくれため。

 おおっ。美和くんの着替えが終わったようだね。それでは、第一段階二日目のプログラムに入るとしよう。さあ、佐伯くん、美和くん、寝室へ行こうか。

7 ボディチェック(第二夜)

 美和は、ピンクベージュの薄物をまとってベッド脇に立っていた。レオタードとも下着ともとれる、体にぴったりフィットした素材は限りなく薄い。美和の豊満なバストと充実したヒップを肉感的かつ扇情的に表現するキャンバスのようであった。ピンクベージュの布地を透かして、やや大きめの乳輪と薄めの陰毛が窺がえる。
「素晴らしいボディだ。佐伯くん、きみの奥さんはスゴイ体をしているねえ。清楚でありながら、きわめてエロティックで、男の欲望をかきたてる。肌が白いねえ。白磁のような肌とは、こういうことを言うのだろうね」
 冴嶋部長は、イヤラシく美和の体を舐めまわすように、上から下へと視線を這わせていた。そして美和の正面に立つと、肩、二の腕、胸、ウエストから腰、ヒップ、太腿へと両手を這わせていった。
「美和くんのボディサイズをチェックさせてもらおうかな。身長とスリーサイズを言ってもらえるかね?」
 美和はもじもじしていたが、冴嶋部長に訊ねられると素直に答えた。
「身長164センチ、バスト91、ウエスト58、ヒップ88です」
「ほほおー。その大きなオッパイは、何カップだね?」
「Fカップです。70Fのブラです」
「ふふーん。これからエッチ三昧で種付けもすれば、まだまだ大きくなるかもしれないゾ。ほおー、そうか。70のFカップか……」
 部長は美和のオッパイを両手で下から支え、上下に揺らしてその感触を確かめていた。
「あっ、部長……。ダメですよ、そんな……。ァン……」
「その場でゆっくりまわってくれるかい? ああ、良い腰つきだ。絞りこまれたウエストからヒップのラインがたまらないねェ」
「……ぁン……」
「さあ、美和くん、そろそろベッドに寝てくれたまえ。仰向けに。それと、佐伯くんはそこのローションを取ってくれるか? さあ、美和くん、ローションを塗るよ。媚薬が入っていて、とっても気持ちがよくなるローションだよ」
 部長は両方の手にローションをとると、首筋から胸のあたりをマッサージしながら塗り始めた。特に、乳輪のあたりに丹念に塗りこんでいた。
「……あっ、部長、そこは……あっ……ダメ……感じる……」
 ローションを吸った布地は完全に透けて、美和の乳首と乳輪を淫猥に浮き上がらせていた。その敏感な部分を、冴嶋部長はしつこくこねくりまわしていた。指先で乳首の先端をコリコリと刺激している。もともと胸が敏感の美和には耐えられるはずがなかった。
「さすが、Fカップのバストは揉み応えがあるねェ。なあ、佐伯くん、そうだろ?」
「……あっー……アハン……あなた……たすけて……わたし……変に……なってしまうわ……あっー……ああっー……」
 私には何もできなかった。ただ小さく「美和」と呟くことしかできなかった。そのあいだも、部長は美和の胸を攻めていた。オッパイを鷲づかみにして揉み上げながら、ときに乳首と乳輪を不規則に指でころがしていた。
「なかなかエロイ乳首だね、美和くん。乳輪もエッチな雰囲気でそそるよ。ナマで舐めたいところだが、今夜は着衣のままマッサージだからね。我慢するのだよ、美和くん。そういうことだから、佐伯くん。今日は、奥さんを裸にはしないから安心してくれたまえ」
 部長の手はウエストから腰のあたりをマッサージし、しだいに下腹部の方へと伸びていった。さらにタップリとローションを手にとると、美和の恥丘をさすり始めた。
「……部長……そこは勘弁してください……。……美和……何とか言えよ……」
 私はやっとのことで言葉を搾り出した。
「ダメだよ、佐伯くん。着衣のまま、いちばん大切なところも、しっかり点検させてもらうよ。だいたい、奥さんの状態を見たまえよ。これがイヤがっているように見えるかね?」
「……そんな……部長……ああっ……ヤメて……あっ……ああっ……」
「さあ、足を開いて……。M字型に足を開いて、股をさらけ出してごらん。そうそう」
 美和は大股開きになった。クロッチ部分は元々とても布幅が狭かったので、かろうじてワレメと小陰唇は隠れているが、大陰唇は露出していた。色白でほとんど色素沈着していない美和のアソコは、うすいピンク色でとてもキレイだった。その秘密の部分にも、部長は容赦なくローションまみれの手をのばし、愛撫していた。
「……ああっー……ダメ……あっハーン……イヤ……気持ちイイ……イヤッ……あなた……ああっ……ごめんなさい……あっ……」
 美和の股間がグッショリ濡れているのは、ローションだけではないようであった。部長の指先はワレメに沿って動き、布地ごしに小陰唇を、直接に大陰唇を撫ぜていた。ときおり人差し指で、クリトリスのあたりをコリコリと刺激していた。
「奥さんのアソコは充分に熟れた果実のようだよ。熟れ熟れで、いまにもその実が落ちてきそうだよ、佐伯くん。うまそうだよ」
 部長は美和の股間に顔を近づけて、クンクンと雌の匂いを確かめていた。
「少なくとも二週間は禁欲を続けているはずだから、かなり欲求がたまっているだろうねェ。でも今日はエッチしないよ。お楽しみは少しずつ、少しずつ……」
 どうやら部長は、引っ張られたバネがエネルギーを最大限に溜め込むのと同じように、美和の官能中枢を最大限に刺激してから「おあずけ」をくらわす算段のようであった。乳首を刺激され、陰唇を愛撫されて「その気」になってしまった美和を生殺しにするつもりのようであった。もちろん、その光景を目の当たりにしている私も、同じ状態にあったが……。
「……ああっ……あああ……イイ……ぁふーン……」
 媚薬を含んだローションの甘い香りと、快感に悦びの声を漏らす美和の熱い吐息で、冴嶋部長の寝室は淫猥な空気に包まれていた。

<つづく>
  1. 2013/08/17(土) 10:05:13|
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伯爵からの招待(2)

[5423] 伯爵からの招待(2) 角笛 投稿日:2008/11/30 (日) 03:23
3 始まりのとき(再訪第一夜)

 私と美和の結婚式は予定どおり、執り行われた。家族・親族や会社の同僚・友人たちに祝福され、人生最良の日を過ごすことができた。私は美和のことを、この地上でいちばん愛しているし、彼女も私のことを愛していると確信していた。
 冴嶋部長の主賓スピーチを聞いたとき――彼は私と美和の上司であったので――その言葉と重なるようにあの日の命令が頭の中に響いていた。
――結婚式・新婚旅行をしっかり楽しんでおいで。
――でもそのあいだ、決して抱き合ってはいけないよ。
――禁欲を守るのだよ。セックスレスだよ。

 隣に立っている美和の顔を見ると、彼女も私と同じことを考えながらスピーチを聞いているようだった。あれから私と美和は、キスこそできたが、抱き合うことができなかった。冴嶋部長の言葉を信じていたわけではなかったが、抱き合おうとすると背筋が凍りつくような恐怖を感じ、身動きすることができなかったのだ。催眠術や暗示の類を疑ったが、なんとなく直感的にそうではないということを悟った。感情や頭の中に浮かんでくるさまざま概念を超えた、もっと底の深い畏れに心が支配されているといってよかった。威圧? 脅威? 己の生存に危うさを感じるほどの恐怖? わからない……。

「結婚おめでとう。新婚旅行は楽しめたかい? 佐伯亮輔・美和夫妻が晴れて誕生したわけだ。おめでとう」
 冴嶋部長の言葉で、この二週間――結婚式前後のこと――をぼんやりと考えていた私は現実に引き戻された。
「部長、どういうことですの? わたしたち、部長のおっしゃるとおり、まだ……。おかしいですわ。なんとか言ってください」
 美和も同じことを考えていたのだ。この二週間、新婚の夫婦がセックスレスであるということを。極めて不自然なことだ。

 冴嶋部長は唇の左端を上げてイヤラシイ笑みを浮かべた。
「どうだい? 私の言ったとおり、キス以外は何もできなかっただろ? 私の命令はきみたちの本能に刻み付ける。だから逆らうことはできないのさ。生きているかぎり、どれだけ理性的になろうと本能を捨てることはできないのだからね」
 例の酒らしきを3つのグラスに注ぎながら、冴嶋部長はさらに続けた。
「私はね、きみたちに最高の快楽を味わってもらおうと思っているのだよ。究極と言ってもいいかもしれない。まず、きみたちに訊ねるがね。男女のセックスにおいて、いちばん快楽を味わえるシチュエーションが何であるか、わかるかね?」
 突然の質問に、私は答えに窮した。美和も同様のようであった。エー、とか、ウーンと言いながら小首をかしげている。ゆるやかにウェーブのかかった黒髪が肩にたれて美しい。
「答えは簡単なのだよ。いいかい。女にとっての究極の快楽はね、『愛する男の目の前で、他の男にもてあそばれる』ことなのだよ。男にとってはね、『愛する女が自分の目の前で凌辱されるのを、指を咥えて見ているしかない』ことなのだよ」
 私は後頭部を鈍器でたたかれたような衝撃を受けた。同時に、この二週間禁欲を続けていた男の部分が、ピクリと反応したように感じた。
「部長はいったい何をしようと考えているのですか? 私はあなたの言っていることがわからない。私たち夫婦のどこが気に入らないのですか?」
「気に入らないのではないよ。まったくその逆だよ。私は、美和くん――きみの可愛いくて美しい奥さん――のことをたいそう気に入っているのだよ。さあ、新しい酒だ、飲みたまえ」
 私も美和も、冴嶋部長の言葉には逆らえなかった。言われるまま、グラスにつがれた酒を口にした。このあいだ飲んだものよりもさらに芳醇で濃厚な味わいであった。

 冴嶋部長も酒を一気に飲み乾すと、空になった三人のグラスを集め、再び酒を注いだ。
「今日から『禁断の果実』プログラムは第一段階がスタートするよ。いま、きみたちが飲んだ酒はね、美和くんの方が『快楽の虜』、佐伯くんの方が『服従の証』だよ。このあいだも言ったように、同じボトルから注いだ酒でも、その人によって解釈や意味が違ってくるのだよ。わかるかい? 心配しなくても、徐々にわかってくるよ。イヤでもね。ちなみに私が飲んでいた酒はね、『絶対的な威信』とでも言ったらよいかな?」
 冴嶋部長――本名、冴嶋威信(たけのぶ)――は、そう言うと、口角を上げて、口をVの字にして笑った。

4 口唇愛撫(再訪第一夜)

「さあ、美和くん、こっちにおいで。さあさあ」
 手招きされると、美和は立ち上がって冴嶋部長の隣のソファーへと移動した。口では、イヤ、とか、ダメェ、とか言いながら、逆らえないようであった。
「佐伯くんはそこに坐ったまま見ていてくれよ。きみの愛する奥さんは、とっても美味しそうだよ。唾があふれてくるよ」
「イヤッ。あなた、助けて。あっ、ダメェ……」
 冴嶋部長に髪を撫ぜられた美和は抵抗しようと試みているようであったが、口先だけでまったくダメであった。冴嶋部長にされるがまま……。もっとも、私も同様に動けずにいたが……。
「しかし、こうやって近くであらためて見ると、美和くんは美しいねェ。佐伯くん、きみの奥さんはやっぱり素晴らしいよ。さあ、その愛らしい唇にキスさせてもらうよ」
「イヤぁー、ダメェ。あなた、助けて。あっ……ァン……ムフ……」
 冴嶋部長の口で、美和の美しい唇が塞がれた。私の美和が……私の目の前で……。
 ピチャピチャ音をたてながら、冴嶋部長は美和の唇を割ると、舌を挿入しようとしていた。美和は抵抗しようとしていたが、吐息を漏らした瞬間、侵入されてしまった。美和の肩から力が抜けていき、骨のない人形のように体がグッタリした。唇の音が激しくなっていた。美和も舌をからめているのかもしれない。私は悶々としながら成り行きを見ていた。あいかわらず、立ち上がることすらできず、じっと傍観しているしかなかった。
 冴嶋部長は骨のなくなった女の体を抱きながら、唇を耳へと這わせていった。美和の口からは、知らぬまに甘い吐息が漏れ始めていた。冴嶋部長が美和の耳を軽く噛んだとき、悦びを含んだ声が発せられた。
「……ぁアッー……あー……アン……。ダメェ……。あー、アフン……」
 美和の耳の中に舌を差し込んだり、舐めまわしたりしながら冴嶋部長が言ってきた。
「佐伯くん、きみの奥さんは抱き心地が最高だよ。骨がなくなったように柔らかくて気持ちいいよ。オッパイも大きいねェ」
 純白のワンピースを着た美和の体に、冴嶋部長のいやらしい手が這っていた。美和が汚されている。美和がもてあそばれている。美和が嬲られている……。私は自分の情けない姿に対し、言いようのない屈辱を感じながら、同時に股間に異変を感じていた。愛妻が、新妻が、犯されようとしていることに対し、勃起していた。
「……あっ……あっハーン……あー……ゥフン……」
 美和の口からは明らかに悦びの声が漏れていた。もう、疑いようはなかった。
「美和くん、気持ちよくなってきているんだね。佐伯くん、奥さんは私との愛撫を楽しんでくれているようだよ。きみもどうだい? 興奮してきたかい? 股間がふくらんでいるようだね? どうだい、目の前で愛妻が堕ちていく姿を見るのは? なんとも言えない、複雑な快感だろう? でもね、今日は服は脱がさないよ。このまま、服を着たままでの愛撫までだよ。毎日少しずつ、少しずつ、きみの奥さんには堕ちていったもらいたいからね。きみも少しずつ、少しずつ、屈辱からくる快楽を味わっていってもらいたいのだよ。底が深いよ。しかし、なんだねェ。美和くんはスリムだけど、なかなか肉感的で、いい体をしているね。胸と腰のボリュームに比べてこれだけ細いウエストは、ほんとうに罪作りな体だねェ。男にとっては目の毒だよ」
「イヤン、そんなことありません。あっ……ダメ……部長……あっ……」
「佐伯くん、どうだい? 堕ちていく女は最高だろ? 人妻は夫を裏切るものなんだよ。快楽に負けてね。そして、自分から体を開いて、男を招き入れるのだよ」
 私は高まったリビドーに戸惑いながら、熱い吐息と嬌声を漏らす美和の艶やかな姿にとても興奮していた。

<つづく>
  1. 2013/08/17(土) 05:44:34|
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伯爵からの招待(1)

[5403] 伯爵からの招待(1) 角笛 投稿日:2008/11/29 (土) 02:18
――本能を理性で抑えこむことはできない。
――どれだけ修行を積み、訓練しようとも、
――生きているかぎり、本能に支配される瞬間が必ずある。
――我が一族に受け継がれた能力が効果を発揮するのは、まさに、そこなのだよ。
――生殖本能による心の波を最大限に増幅してやり、その波頭を〝撫でて〟やる。
――そうすれば、思いのままに操ることができるだ。
――つまり、我々は、そのような力を活用しながら静かに繁殖してきた種族の末裔なのだ。
               ……『威』という文字を名に刻む、ある男の言葉より

1 禁断の果実

「忙しいきみたちを自宅にまで誘って悪かったねェ」
 ソファーに坐るよう私と美和に促すと、冴嶋部長はゆっくりと正面に腰を掛けた。冴嶋部長の年齢は確か48歳。独身。身長180センチ前後の長身で、175センチの私より目線ひとつ、いやふたつぐらい背が高い。端正な顔立ちのハンサムで、オールバックにした黒い髪がセクシーだ。頭が切れて、これだけルックスがいいのに何故独身なのかと疑問を唱える者が多いが、一方、モテる男を繋ぎとめることのできる女がいないのだという説もある。また、少数意見ではあるがホモではないかと疑う声も……。

「いえいえ、今日は大変ご馳走になりまして、本当に恐縮しております。ありがとうございました」
 私は深々と頭を下げながら、そう答えた。私の名は佐伯亮輔。年齢は28歳。某業種の商品企画部門で働いている。一週間後に職場の2年後輩である山元美和と結婚する予定だ。
「とっても美味しい料理がいただけて、今日は本当に楽しませていただきましたわ」
 隣に坐っている美和が微笑みながら答えた。美和は年齢26歳。美人だ。身長164センチ、豊満なバストから折れそうなぐらい細いウエストへ絞り込まれたボディラインは奇跡といっていい。スッキリした和風の面立ちに艶やかな黒い髪。今日はその自慢の黒髪をレースのヘアバンドでまとめ、知的な額をあらわにしている。とてもキュートだ。切れ長の目、意志の強そうな細い眉、愛らしい唇。口許の右にあるホクロがちょっと色っぽい。
「それと……。この窓から見える夜景。素晴らしい眺めですわ」
 ウットリしながら美和がつけ加えた。眼下に広がる景色には、どのくらいの価値があるのだろう? 百万ドルの夜景って、どこのことだったっけ?
「気に入ってもらえて私もうれしいよ。さあ、口直しに少し飲まないかね? とっておきの逸品があるんだよ」
 冴嶋部長は琥珀色の液体が入ったボトルの口を開けて3つのグラスに酒を注いでいた。
「商企一課(商品企画一課)の山元くん――もうすぐ佐伯美和くんだったね――を射止める男が誰であるのか以前から注目していたが、佐伯くんだったとはね」
「意外でしたか?」
「いやいや、とてもお似合いだと思うよ。きみたちには期待しているんだよ。いろいろな意味でね」
 冴嶋部長は肉食獣のような笑みを見せながら、そう言った。
「さあさあ、とっておきの酒をご賞味あれ。病みつきになる美味さだよ。さあさあ」
 私と美和はグラスを手渡された。二人とも一口飲んでみた。
「あら、口あたりが良くて美味しい。ほんのり甘い感じがとても上品だわ」
「ほんとだ。スッキリしていて、それでいて芳醇な味わいもある」
 私も美和も、残りを一気にあおった。
「なかなかいけるだろ? さあ、おかわりをどうぞ。まだまだいっぱいあるからね」
 おかわりがグラスに注がれると、私たちは一気に飲み乾した。
ウマイ。細かい形容をし難い美味さだ。そして、何かしら気分が高揚してきた。

 私も美和も、無意識に何杯もおかわりを呑んでいた。美和の目がトローンとしてきた。双眸は少し濡れてきているように見えた。私もだんだん気分が良くなってきていた。
「部長、このお酒はなんという名前の酒ですか? 不思議な感じがするんです」
「これかい、これはね……」
 冴嶋部長は琥珀色の液体が入ったボトルを両手でクルクルまわしながら答えた。
「この酒はねェ、『禁断の果実』と言うんだよ」
「『禁断の果実』? 『禁断の果実』って、アダムとイヴがエデンの園で口にした……あの『禁断の果実』ですか?」
「そうだよ、あの『禁断の果実』だよ。厳密に言うとね、美和くんが飲んでいたのは『背徳の蜜』で、佐伯くんが飲んでいたのは『服従の兆し』だよ」
「『背徳の蜜』と『服従の兆し』? えっ? 同じ酒を飲んでいたと思いますが……」
「そうだね。確かに同じ酒を飲んでもらったよ。でもね、その意味するところは人それぞれに異なるのさ。まっ、いずれわかるだろう。いまはわからないだろうけどね」
 冴嶋部長が美和のグラスにおかわりを注ぐと、美和はそれをすぐに飲み込んだ。
「何かとても淫靡な響きのお酒だけど、とっても美味しいわ。ウフッ。またおかわりいただけますか?」
「飲みすぎはダメだよ。と言いながら、私もおかわりいただけますか?」
「ああ、いいよ。どんどん飲んでくれたまえ。とても気に入ってもらえてうれしいよ」
 私たち二人は、冴嶋部長の酒を飲み続けた。

 とても気分が良かった。心地よくて、なにか魂が解放されていくような、そんな不思議な感覚に支配されていた。意識はハッキリしているのだが、夢をみているような……。
「さて、佐伯くん、山元くん。いよいよ、これから本題に入るよ。きみたちに、ひとつお願いがあるのだよ。『お願い』なんだけど、実は『お願いではない』のだけどね」
「なんでしょう、部長。言ってください……」
「きみたちには、今日から『結婚式・新婚旅行』を終えて再び私に逢うまでのあいだ、禁欲を守ってもらいたいのだよ。いいかい? セックスレスでいてもらいたいのだよ」
「えっ? どういうことですか?」
 私と美和は顔を見合わせた。冴嶋部長は何を言っているのだ? 一週間後に結婚するカップルに向かって、セックスするなだと! なんなんだ、いったい!?
「まあまあ、そんなに驚かないでくれ。すぐに私の意味するところを理解できるよ。その前に私の一族のことを簡単に説明しておこう」
 冴嶋部長はそう言うと、立ち上がって窓へ向かって歩き出した。そして、こちらに向き直ると静かに話し出した。

2 〝伯爵〟の末裔

 ドラキュラ伯爵を知っているだろ? もちろん、小説や映画の話で、実在していたかどうかを云々するつもりはないよ。彼はヴァンパイヤとして人間から恐れられたが、彼の能力で着目すべき点は、実は他にあるのだよ。何かわかるかね? それはね、女性を虜にする力だよ。それと、男性を威圧する力だよ。
 女はドラキュラ伯爵を自分の寝室に招き入れる。これは、貞節を捨てて、亭主や恋人以外の男に体を開くことを意味しているのだよ。ドラキュラ伯爵の男としての魅力に逆らえず、誘惑されて堕ちる女。愛する男を裏切って背徳に身をやつす女の性を表しているのだよ。
 一方、男は愛する女(妻、恋人)を守りきれず、ドラキュラ伯爵に奪われてしまう。男として最大の屈辱。妻や恋人の密通を阻止できない無能を表しているのだよ。

 私の一族は、別にヴァンパイヤの末裔ではないよ。強いて言えば〝伯爵〟としての能力――女を誘惑し、男を服従させる能力――を代々受け継いでいるものの末裔なのだよ。
 私の言葉と意志は、人の本能に強く働きかける。いいかい? 本能にだよ。人がどれほど理性的に行動しよう思っても、生きているかぎり、本能に逆らうことはできない。だって、生き物なんだからね。宿命だよ。私の意志は、きみたちの本能に作用する。そして、誘惑する。威圧する。服従させる。マインドコントロールが可能なのだよ。逆らえないよ。信じられないという表情をしているね。まあ、すぐにわかる。私の言っていることの意味が。すぐにネ。
 私の放つフェロモンに女は惑い、私の放つオーラに男は従う。生あるモノが背負わされた業からは逃れることはできない。

 今回私は、まさに結婚しようとしているきみたちカップルを選んだ。私の一族では、こういう場合の女性を〝花嫁〟、男性を〝しもべ〟もしくは〝下僕〟と呼んでいる。言葉のとおりだよ。新婦は私の〝花嫁〟、新郎は私の〝しもべ〟だ。

 さあ、今日のところはこれぐらいにしておこう。わかったね。結婚式を挙げて、新婚旅行に行って、しっかり楽しんでおいで。でもそのあいだ、決して抱き合ってはいけないよ。まあ、キスは許してあげよう。それ以上のことは禁止だよ。きみたちの本能に刻みつけたから、もう従うしかないけどネ。かわいそうだけど。
 そして、帰ってきたらすぐに私の許へおいで。ここへ、また来るんだよ。わかったネ!? 第一段階が始まるよ。楽しみだね。そのときには、『背徳の蜜』と『服従の兆し』に代わる新しい酒――『禁断の果実』――を用意して待っているよ。
 では、再び逢う日まで。幸せな結婚式を挙げて、せいぜい楽しんでくれたまえ!!

<つづく>
  1. 2013/08/16(金) 19:43:57|
  2. 伯爵からの招待
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