妻と男の物語


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伯爵からの招待(2)

[5423] 伯爵からの招待(2) 角笛 投稿日:2008/11/30 (日) 03:23
3 始まりのとき(再訪第一夜)

 私と美和の結婚式は予定どおり、執り行われた。家族・親族や会社の同僚・友人たちに祝福され、人生最良の日を過ごすことができた。私は美和のことを、この地上でいちばん愛しているし、彼女も私のことを愛していると確信していた。
 冴嶋部長の主賓スピーチを聞いたとき――彼は私と美和の上司であったので――その言葉と重なるようにあの日の命令が頭の中に響いていた。
――結婚式・新婚旅行をしっかり楽しんでおいで。
――でもそのあいだ、決して抱き合ってはいけないよ。
――禁欲を守るのだよ。セックスレスだよ。

 隣に立っている美和の顔を見ると、彼女も私と同じことを考えながらスピーチを聞いているようだった。あれから私と美和は、キスこそできたが、抱き合うことができなかった。冴嶋部長の言葉を信じていたわけではなかったが、抱き合おうとすると背筋が凍りつくような恐怖を感じ、身動きすることができなかったのだ。催眠術や暗示の類を疑ったが、なんとなく直感的にそうではないということを悟った。感情や頭の中に浮かんでくるさまざま概念を超えた、もっと底の深い畏れに心が支配されているといってよかった。威圧? 脅威? 己の生存に危うさを感じるほどの恐怖? わからない……。

「結婚おめでとう。新婚旅行は楽しめたかい? 佐伯亮輔・美和夫妻が晴れて誕生したわけだ。おめでとう」
 冴嶋部長の言葉で、この二週間――結婚式前後のこと――をぼんやりと考えていた私は現実に引き戻された。
「部長、どういうことですの? わたしたち、部長のおっしゃるとおり、まだ……。おかしいですわ。なんとか言ってください」
 美和も同じことを考えていたのだ。この二週間、新婚の夫婦がセックスレスであるということを。極めて不自然なことだ。

 冴嶋部長は唇の左端を上げてイヤラシイ笑みを浮かべた。
「どうだい? 私の言ったとおり、キス以外は何もできなかっただろ? 私の命令はきみたちの本能に刻み付ける。だから逆らうことはできないのさ。生きているかぎり、どれだけ理性的になろうと本能を捨てることはできないのだからね」
 例の酒らしきを3つのグラスに注ぎながら、冴嶋部長はさらに続けた。
「私はね、きみたちに最高の快楽を味わってもらおうと思っているのだよ。究極と言ってもいいかもしれない。まず、きみたちに訊ねるがね。男女のセックスにおいて、いちばん快楽を味わえるシチュエーションが何であるか、わかるかね?」
 突然の質問に、私は答えに窮した。美和も同様のようであった。エー、とか、ウーンと言いながら小首をかしげている。ゆるやかにウェーブのかかった黒髪が肩にたれて美しい。
「答えは簡単なのだよ。いいかい。女にとっての究極の快楽はね、『愛する男の目の前で、他の男にもてあそばれる』ことなのだよ。男にとってはね、『愛する女が自分の目の前で凌辱されるのを、指を咥えて見ているしかない』ことなのだよ」
 私は後頭部を鈍器でたたかれたような衝撃を受けた。同時に、この二週間禁欲を続けていた男の部分が、ピクリと反応したように感じた。
「部長はいったい何をしようと考えているのですか? 私はあなたの言っていることがわからない。私たち夫婦のどこが気に入らないのですか?」
「気に入らないのではないよ。まったくその逆だよ。私は、美和くん――きみの可愛いくて美しい奥さん――のことをたいそう気に入っているのだよ。さあ、新しい酒だ、飲みたまえ」
 私も美和も、冴嶋部長の言葉には逆らえなかった。言われるまま、グラスにつがれた酒を口にした。このあいだ飲んだものよりもさらに芳醇で濃厚な味わいであった。

 冴嶋部長も酒を一気に飲み乾すと、空になった三人のグラスを集め、再び酒を注いだ。
「今日から『禁断の果実』プログラムは第一段階がスタートするよ。いま、きみたちが飲んだ酒はね、美和くんの方が『快楽の虜』、佐伯くんの方が『服従の証』だよ。このあいだも言ったように、同じボトルから注いだ酒でも、その人によって解釈や意味が違ってくるのだよ。わかるかい? 心配しなくても、徐々にわかってくるよ。イヤでもね。ちなみに私が飲んでいた酒はね、『絶対的な威信』とでも言ったらよいかな?」
 冴嶋部長――本名、冴嶋威信(たけのぶ)――は、そう言うと、口角を上げて、口をVの字にして笑った。

4 口唇愛撫(再訪第一夜)

「さあ、美和くん、こっちにおいで。さあさあ」
 手招きされると、美和は立ち上がって冴嶋部長の隣のソファーへと移動した。口では、イヤ、とか、ダメェ、とか言いながら、逆らえないようであった。
「佐伯くんはそこに坐ったまま見ていてくれよ。きみの愛する奥さんは、とっても美味しそうだよ。唾があふれてくるよ」
「イヤッ。あなた、助けて。あっ、ダメェ……」
 冴嶋部長に髪を撫ぜられた美和は抵抗しようと試みているようであったが、口先だけでまったくダメであった。冴嶋部長にされるがまま……。もっとも、私も同様に動けずにいたが……。
「しかし、こうやって近くであらためて見ると、美和くんは美しいねェ。佐伯くん、きみの奥さんはやっぱり素晴らしいよ。さあ、その愛らしい唇にキスさせてもらうよ」
「イヤぁー、ダメェ。あなた、助けて。あっ……ァン……ムフ……」
 冴嶋部長の口で、美和の美しい唇が塞がれた。私の美和が……私の目の前で……。
 ピチャピチャ音をたてながら、冴嶋部長は美和の唇を割ると、舌を挿入しようとしていた。美和は抵抗しようとしていたが、吐息を漏らした瞬間、侵入されてしまった。美和の肩から力が抜けていき、骨のない人形のように体がグッタリした。唇の音が激しくなっていた。美和も舌をからめているのかもしれない。私は悶々としながら成り行きを見ていた。あいかわらず、立ち上がることすらできず、じっと傍観しているしかなかった。
 冴嶋部長は骨のなくなった女の体を抱きながら、唇を耳へと這わせていった。美和の口からは、知らぬまに甘い吐息が漏れ始めていた。冴嶋部長が美和の耳を軽く噛んだとき、悦びを含んだ声が発せられた。
「……ぁアッー……あー……アン……。ダメェ……。あー、アフン……」
 美和の耳の中に舌を差し込んだり、舐めまわしたりしながら冴嶋部長が言ってきた。
「佐伯くん、きみの奥さんは抱き心地が最高だよ。骨がなくなったように柔らかくて気持ちいいよ。オッパイも大きいねェ」
 純白のワンピースを着た美和の体に、冴嶋部長のいやらしい手が這っていた。美和が汚されている。美和がもてあそばれている。美和が嬲られている……。私は自分の情けない姿に対し、言いようのない屈辱を感じながら、同時に股間に異変を感じていた。愛妻が、新妻が、犯されようとしていることに対し、勃起していた。
「……あっ……あっハーン……あー……ゥフン……」
 美和の口からは明らかに悦びの声が漏れていた。もう、疑いようはなかった。
「美和くん、気持ちよくなってきているんだね。佐伯くん、奥さんは私との愛撫を楽しんでくれているようだよ。きみもどうだい? 興奮してきたかい? 股間がふくらんでいるようだね? どうだい、目の前で愛妻が堕ちていく姿を見るのは? なんとも言えない、複雑な快感だろう? でもね、今日は服は脱がさないよ。このまま、服を着たままでの愛撫までだよ。毎日少しずつ、少しずつ、きみの奥さんには堕ちていったもらいたいからね。きみも少しずつ、少しずつ、屈辱からくる快楽を味わっていってもらいたいのだよ。底が深いよ。しかし、なんだねェ。美和くんはスリムだけど、なかなか肉感的で、いい体をしているね。胸と腰のボリュームに比べてこれだけ細いウエストは、ほんとうに罪作りな体だねェ。男にとっては目の毒だよ」
「イヤン、そんなことありません。あっ……ダメ……部長……あっ……」
「佐伯くん、どうだい? 堕ちていく女は最高だろ? 人妻は夫を裏切るものなんだよ。快楽に負けてね。そして、自分から体を開いて、男を招き入れるのだよ」
 私は高まったリビドーに戸惑いながら、熱い吐息と嬌声を漏らす美和の艶やかな姿にとても興奮していた。

<つづく>
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