妻と男の物語


スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告


誠実な人(2) 2

[Res: 4287] Re: 誠実な人(2) イワタ 投稿日:2008/07/15 (火) 23:21

画面をしばらく眺め、意を決し、携帯電話を耳にあてます。
「もしもし、あなた?」
何故だか、妻の声が懐かしく聞こえました。
遠くに行ってしまった誰かと再会して話すような懐かしさです。
「どこに居るの?終わったよ・・・。」
「終わった?」
「うん、終わった。」
『終わった』という言葉が、私の中に重く沈みます。
本人は何が終わったというつもりでしょうか。
私が目撃したあの行為でしょうか。
まさか、私が知っているとは思ってもいないはずです。
「大丈夫だった?」
「ええ・・・。」
少しだけ、声がトーンダウンするのがわかりました。
「本当に?」
「うん・・・、大丈夫だよ。それより、早く帰ってきてね。」
「ああ。今から帰るよ。」
少しの間の後、携帯電話はプツリと切れました。

私は、携帯をひしと握り締めると、妻の言葉に後押しされるように、高台から坂を下り始めました。
家に帰れば何が待っているのか、深く考えたくはありませんが、今は家に帰ること、それだけです。
高台からの坂道を下りきると、握り締めた携帯がブルブルと再び振動を始めました。
携帯を耳に持って行き、真正面に顔を向けると、50メートル先に男性が携帯を持ってこちらに軽く会釈をしているのが見えます。

権藤さんでした・・・。
関連記事

  1. 2012/12/04(火) 16:34:19|
  2. 誠実な人
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0


<<誠実な人(2) 3 | ホーム | 誠実な人(2) 1>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://tsumaotoko.blog.2nt.com/tb.php/802-112565a0
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)