妻と男の物語


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淫舞①

[3911] 淫舞① 角笛 投稿日:2008/05/18 (日) 16:58
(プロローグ)
 海外での単身赴任から年末に帰ってきた孝太郎と新年を迎えることができ、
柏木芙美子は幸せであった。日々を一緒に過ごすことができる喜び。
愛する人に自分のことを理解してもらえないことほどつらいことはないと思うが、
彼は芙美子の全てを受け容れ、愛してくれていた。
もちろん、彼女の性癖を含めてのことである。

 ここで芙美子の美貌について整理しておこう。
 瓜実顔に切れ長でパッチリとした目、筋の通った鼻、愛らしい唇、ゆるやかにウェーブ
のかかった長い黒髪。清楚で、艶やかで、人目を惹かずにはいられない容貌。
クラシックバレエと走り高跳びで鍛えられた、
   168センチ、52キロ、B91(Fカップ)、W56、H89
という迫力満点のボディ。アンダーバストからウエストにかけて極限に絞り込まれてから、
肉づきよく充実した腰へと続くボディラインは絶妙と言ってよかった。
最近、周囲の人から褒められることがよくあり、それが老若男女を問わずなので、
もしかしたら、本当に?、と彼女の中でも自信になりつつあった。
 さあ、そして、である。彼女の性癖――ニンフォマニア。
いったんエッチのスイッチが入ってしまうと、快楽に溶け出しメルトダウンしてしまうと、
芙美子はセックスにとことん貪欲となり、抑制がきかなくなってしまうのだ。
官能の限りを尽くし、快感の甘い蜜を一滴残らず吸い上げるまで肉欲に耽ってしまうのだ。
清楚で貞淑な人妻の顔と、艶やかで淫らなニンフォマニアの顔と、
ふたつの顔を持った芙美子を、孝太郎は全て愛してくれていた。
 たとえどのような男に弄ばれ、快楽に悦びの声を上げようと、孝太郎と芙美子は
心から信じ合い、愛し合っていた。彼ら夫婦は、確かに幸せだったのだ。

 1月、孝太郎が31歳の誕生日を迎えた日の夕食時、芙美子は彼から
友人の来訪について聞かされた。
「えっ、今週末?」
「うん。急なことで悪いけど、そうなんだよ。今週の土曜の晩、学生時代の友人がふたり、
うちへ遊びにきたいと言ってるんだ。体育会系でとってもいい奴らなんだよ」
「ええ、わかったわ、大丈夫よ。それじゃあ、なんのお料理にしようかしらね?」
「あいつらなら、道端の雑草でも、食えるものならなんでも大丈夫さ」
「まあ」
 芙美子は眉間に皺を寄せ口をとがらせる仕種を見せた。
「そんなことを言ったら、本当に雑草を刈り取ってくるわよ」
「OK! 犬のションベンのかかってないところをね」
 芙美子は両手を上げて、ヤレヤレ、というポーズを示した。
「さあ、早く食べてしまってよ。後片付けが残ってるんだから」

(1)
 土曜の晩はあっという間にやってきた。
予定時刻どおりにやって来た訪問客を迎え、柏木家は活気に満ちていた。
 冬の定番といえば、やはり鍋料理。海の幸をふんだんに盛り込んだ鍋を用意し、
宴は始まりつつあった。
「じゃあ、まずはビールで乾杯。それでいいよね?」
 孝太郎の問いかけに皆同意した。各人のグラスにビールを注ぎ合う。
「今日は急におしかけて、ホントすみません」
「ホンマ、すんませんこって。堪忍してください」
「まあまあ、気にするなって。なあ、芙美子?」
 孝太郎は、ふたりの客に返したあと、芙美子に顔を向けてそう言った。
「ええ、お気になさらないでください。お客さんは大歓迎ですから」
 ふたりの客は笑みを浮かべて頭をペコリと下げた。
「そうそう、名前の紹介がまだだったな。結婚式に出席してくれてたから、
うちの芙美子は知ってるよね? で、こっちが堤、そっちが桜庭。ふたりとも学生時代は
アメフトをやっていたんだよ」
 孝太郎に紹介されて、孝太郎より精悍な顔つきではあるが甘いマスクをした方の客が
口を開いた。
「初めまして、ではないですね。結婚式でお会いしているんだから。
えー、堤和也と申します。柏木と同じ工学部でした。学科は違いますけど。
現在は某メーカーで商品企画の仕事をやっています。31歳、独身です」
 彼の『31歳、独身です』と言うところで、一同は笑い声を上げた。
「ほな、続きまして、桜庭大介と言います。自分は経済学部でした。柏木とは、
堤を通じて友人になりました。一留したので卒業は一年遅れましたけど、現在は
スポーツ&アミューズメント関係の会社で営業をやっています。
関西出身の31歳、独身です」
 スポーツ刈りで、いかにも体育会系という容貌の桜庭が立ち上がって自己紹介した。
かなりの大柄である。桜庭は身長187センチということだった。
もっとも、堤にしても身長は180センチあり、178センチの孝太郎より若干高い。
 孝太郎とは雰囲気の違うふたりを前にして、芙美子は疑問を口にした。
「孝太郎さんは学生時代クラブはやっていなかったわよね? アメフトのおふたりと
ちょっと不思議なつながりね?」
「くっくっく。まあ、いろいろあったけど、端的に言ったら教養課程の選択科目で
堤と一緒になったのが縁だよな」
「そうだね」
 答えた堤も笑いをこらえていた。
「アメフト部の次代を担うクォーターバック堤とまず友人になり、彼の友人であった
高速徹甲弾、ランニングバック桜庭とも友人になったのさ」
「へえー、そうなの。あっ、グラスが空になっていますわ。どうぞ」
 芙美子は頷きながら、桜庭のグラスにビールを注ぎ込んだ。

 食が進み、アルコールも適度にまわってきたところで堤が切り出した。
「しかし、柏木が吉村先生の娘さんと結婚するとはなあ。最初は驚いたよ」
「ほんまや。ビックリしたわ」
 芙美子の旧姓は吉村であった。吉村芙美子。
「父のことをご存知なのですか?」
「ええ。ここにいる皆、教養課程で先生の講義を受けていますから。
確か社会心理学だったよな」
「そやそや。あるとき柏木が質問して、なんか議論になったんやな。
あれはおもろかったでェ」
 三人とも思い出したように失笑していた。
「あとで教授室に行って話しこんでたら、話がどんどん脱線していって
アイザック・アシモフの『銀河帝国シリーズ』の話になったんだ。ほら、あの中で
心理歴史学っていう架空の学問が出てくるんだけど、それがおもしろくって……」
 堤と桜庭は、知らん知らん、と手を振って示した。
「……先生もアシモフを読まれるんですか? てな感じで意気投合して、今度うちに
遊びにおいで、ってことになったのさ」
「そうか。そうやって芙美子さんと知り合ったんだな。うまいことやったな」
「そういう運命だったのさ」
 三人は破顔し、声を上げて笑い出した。
「ところで、お前らはまだ結婚しないのか? いい相手がいるんじゃないの?」
「柏木のせいでハードルが高くなってしまったんだよ」
 孝太郎の質問に堤が代表して答えた。
「お前と芙美子さんの結婚式で芙美子さんを見たからさ。こんなにキレイな女性が
いるのか、と気付かされてから女性を見る目が厳しくなってしまってね。
見劣りしてしまうんだよ。そして、ため息が出てしまうんだよ」
「まあ、堤さんお上手ね」
「いやいや、本当のことですよ。魂から出る真実の叫びですよ。なあ、桜庭?」
「そうそう、その通り!」
「本当は、もっと早く訪問したかったんですけど、結婚されてすぐに柏木が単身赴任で
海外に行ってしまったでしょ。柏木が帰ってくるのを待っていたので挨拶が遅れました」
「まあ、そんな。こちらこそ、いつも主人がお世話になっています」
 四人はクスクス笑い出し、場の雰囲気は和やかなものとなった。

(続く)
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  2. 芙美子シリーズ
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