妻と男の物語


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桜の咲く時(6)

[718] 桜の咲く時(6) 雨ちゅあ ◆wlX16g 投稿日:2004/11/07(Sun) 17:23
黒田「あっ、星野さん、いらっしゃいましたね……鷹司先生、こちらが星野聖美さんです。星野さん、こちらが『雲之上学園』中等部入試担当の鷹司秀樹先生です」
聖美「初めてお目にかかります。星野さやかの母、星野聖美でございます。鷹司先生、この度はまことにありがとうございました。今後とも宜しくお願い致します」
鷹司「初めまして鷹司です。お話は黒田君から聞きましたよ。堅苦しい挨拶はこのくらいにして、早速本題に……」
黒田「先生……、先生……」
鷹司「あ、いや、そうだったな。星野さん、我々もご覧の通り、浴衣姿でくつろがせていただいています。貴方もその恰好では窮屈ですし……何よりここは割烹料亭です。浴衣の方が風情があるというものですよ」
黒田「そうそう、鷹司先生の仰る通りです。星野さん、お風呂にでも入って、浴衣に着替えて来て下さい。浴衣は女将に用意させますから」
聖美「しかし……」
鷹司「我々のことなら気にしないで下さい。実は黒田君とも久しぶりに会ったんです。貴方が来るまで一杯やらせていただきますから」
黒田「そうそう、貴方朝から緊張の連続じゃないですか。お風呂にでも入ってリラックスして来て下さいよ」
聖美「そうですか……ではお言葉に甘えさせていただきます……」

 聖美は黒田たちに促されるままに入浴することになった。うさん臭い話ではあるが聖美には拒絶する権利などないに等しかった。
下手に拒絶して二人のへそを曲げてしまったらまたややこしいことになりかねない。
それに風呂に入って浴衣に着替えるくらいでは特に拒絶する理由も見あたらなかった。

 聖美は仲居に案内され風呂に入った。本当に料亭というよりは旅館のようなものである。檜風呂の香りが聖美の緊張をほぐした。

 風呂からあがると、そこには浴衣が用意されていた。しかし脱いだ服がないし、下着さえもなかった。いや、下着もあるにはあるのだが、白いふんどしが一つあるだけである。
聖美は慌てて仲居を呼び、それにつられるようにして女将もやってきた。
聖美は女将たちに尋ねたが「黒田様のお申し付けですので」「黒田様からお帰りになるまで衣装を預からせていただくように言われております」と言うだけであった。
 そしてもうすぐお得意の男性客がやってきて、この風呂を利用するかもしれないとのことであった。
いつまでもここで全裸のまま粘るわけにはいかなかった。
聖美は仕方なく女将からふんどしの使い方を習い、浴衣を着て「不死鳥の間」へと戻った。

 「不死鳥の間」では二人がニヤニヤした顔で待っていた。それほど飲んだ気配はない。

黒田「おおー、星野さん、綺麗ですねー、浴衣もよく似合っていますよ」
鷹司「本当に似合っていますね。失礼にあたるかもしれませんけど、中学生と見間違うほど初々しくていい感じですよ」
聖美「そ、そうですか……ありがとうございます……」
黒田「さあ、さあ、そちらにおかけ下さい。お腹もすいたことでしょう。料理でも食べながらお話しましょうか。あ、お金の心配は要りませんよ。経費で落としますから」

 聖美は黒田・鷹司と対面する形で座った。さすが高級料亭というだけあって、料理は見た目も味も見事なものであった。黒田と鷹司は聖美をジロジロと嘗め回すような目で見ながら世間話をしていたが、やがて件の「手段」についての話を切り出した。

鷹司「我々の協議の結果、さやかさんは『美術推薦』で入学するのが適当だろうということになりました。作品については本校の美術教師の狩野に用意させますので全くご心配いりません。そして我々が指定するコンクールにさやかさんの名前で出品して下さい。審査員は理事長の息のかかった者ばかりですので結果も既に決まったようなものです。さやかさんはコンクールで最優秀賞をとって箔をつけ、さらに受験当日にも別に用意した作品を提出して下さい。これで誰もが納得するでしょう。但し……」
聖美「但し……私が狩野先生のお相手をすればいいんですね」
鷹司「いいえ。貴方からのお礼は不要です。その代わり、さやかさんには入学後に美術部に入ってもらいます。他の部活と掛け持ちしても結構ですが、後でボロが出て不審に思われないように、基本的には美術部での活動に力を注いでもらいますから」
聖美「はい、よく言い聞かせておきます」
鷹司「あと、他の生徒と一緒のペースでは困りますので、個人指導も受けてもらいますよ」
聖美「えっ……あの……個人指導といいますと……」
鷹司「心配要りませんよ。狩野は少し頑固なところがありましてね。この話を持ちかけた時も一度は拒絶されたのですが、さやかさんの写真を見せたら二つ返事で了承しましたよ。但し、彼も以前からいいモデルを欲しがっていましてね。さやかさんの写真を見て、理想にぴったりだと……」
聖美「そ、そんな……」
鷹司「まあ、嫌なら別にいいんですけどね。但し、他に適当な方法がない以上、『裏』の件はなかったことになります。それに星野さんが個人指導の場に立ち会うことも構いませんし、星野さんのお宅でするというのも構いません」
聖美「………分かりました……その件についても言い聞かせますので……」
黒田「よし、話がまとまったみたいですね! さあ、さあ飲みましょう!」
鷹司「そうですね、今夜は星野さん母娘の合格確定の祝杯をあげるとしましょうか」
黒田「星野さんにもじゃんじゃん飲んでもらいますからね」
聖美「いいえ、私はそんなに強くないので一口だけ……」
黒田「それは残念だ……あ、そうだ、だったら星野さんにお酌してもらいましょうよ。こんな美人に注いでもらったお酒は格別だと思いますよ」
鷹司「それはいいな! 星野さん、どうぞこちらにいらして下さい。この真中の席にでも……」
黒田「もちろんいいですよね? 駄目とは言いませんよね、星野さん」
聖美「はい……」

 聖美は二人の真中の席、つまり黒田の左、鷹司の右に座った。二人は余裕があるにも関わらず聖美にぴったり寄り添うかのように近づいてきた。聖美は「始まり」を確信した……。
(つづく)(次回からいよいよお楽しみシーンですが、もう一度反響をみて考えます…)
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