[956] 思い出の中の男(2) 雨ちゅあ ◆wlX16g 投稿日:2005/05/13(Fri) 18:47
第二話 色あせた思い出
俺は卒業アルバムにあった同級生の名前を使って瀬川の家に電話をかけた。
この物騒な世の中、一歩間違えば詐欺の疑いをかけられて警察に色々とお世話になってしまうかもしれないし、危険な割には瀬川自身がいるとは限らない。かといって、真由美さんに聞けば綾香にばれてしまうだろう。
リスクが大き過ぎる賭けではあったが、幸い、電話に出た瀬川の母親は何の疑いも持たずに瀬川の居場所と連絡先を教えてくれた。
再び俺は瀬川に直接電話をかけるという大きな賭けに出たが、瀬川はあっさりと俺に会ってくれると約束した。
随分上手くいき過ぎて、何か罠があるのではないかと思ったものの、どうしても会わずにはいられなかったのだ。
過去を知りたい・・・・・・綾香と瀬川の関係はどうだったのか・・・・・・。瀬川は一体綾香をどう思っているのか・・・・・・俺の知らない綾香の姿を調べずにはいられなかった。俺の脳裏には、卒業アルバムの中で、瀬川に抱きついて楽しそうに笑う綾香の顔が何度もよぎった。
車で2時間ほどとばし、瀬川の住むアパートに到着した。
何とも小汚いアパートで、お世辞さえも考えつかないくらいのボロアパートだ。
俺を迎えた瀬川も、同窓会の写真に写っていたような爽やかな感じはしなく、どことなくくたびれたような感じで髪の毛もボサボサだ。
俺は警戒しながらも瀬川の部屋に入り、掃除もしていないような臭いにおいを我慢しながら瀬川の話を聞いた。
・・・・・・何が青年実業家だ。こいつは単なるヒモじゃないかよ。
数年前までホストをしていたみたいだが、自分で働くのが面倒になって女のヒモになり、女に逃げられてはまた次の女を探すといったような生活をしていたようだ。
このボロアパートにしても女が借りた部屋で、女は瀬川を食わせるために借金までしたのか、金融機関の督促が厳しくなって、最近ついに逃げられてしまったらしい。
そこでどうしようかと思いながらも、働くのは面倒だと思っているところに俺の電話があり、渡りに舟とばかりに俺と会うことを了承したようだ。何しろ奴の部屋に入るなり、昔の同級生の夫だからというだけで金を無心されたくらいだ。初めからこいつは金目当てで俺と会うのを約束したんだ。
俺が質問する度に、「情報料」とやらを請求され、内心腹立たしかったが従う以外ない。
どうやら綾香と瀬川の間には同級生というだけで本当に何も関係がなかったようで、俺もほっとさせられたが、こんな奴に綾香が夢中になっていたのかと思うとそれはそれで腹立たしいものがあった。
俺の質問のペースが遅くなるにつれて焦る瀬川を見て、俺は今日、ここに来た本当の理由を告げた・・・・・・。
俺は一昨日の夜、様々なサイトを回っているうちに、とある18禁PC用ゲームのレビューを掲載した記事にたどり着いた。
随分古いゲームのようで、今では中古ショップにでも行かないと手に入らないようだが、だいたいの内容はレビューで理解できた。
そのゲームの内容だが、二人の男が一人の女を巡って争い、交互に女とセックスすることによって女の気持ちを自分の方に傾けさせ、女にどっちと寝るかを決めさせるという内容だった。
確かにゲームの内容を現実の世界に当てはめてしまうのは危険な行為だろう。
だが、俺はさらに様々なサイトを巡って「寝取られ趣味」という嗜好がある人たちがいることを知り、その人たちの過激な体験談を読むにつれて、実行してみたくなったのだ。
そう・・・・・・俺は瀬川に決闘を申し入れに来たのだ。だが、別に殴り合って決闘するということではない。
瀬川のことを忘れられないまま、俺たちが夫婦生活を送るのはお互いにとってモヤモヤが残ってしまうだろう。
もし、綾香が瀬川のことを忘れられないなら俺が忘れさせてやる。俺だって瀬川より劣っているわけではないということを見せつけたいという、男の意地のようなものもあった。
後は綾香がどうすればいいか決めればいい。瀬川が了承しても綾香が断るなら俺は無理強いするつもりはない。
正直、瀬川と会うまでは不安にかられ、劣等感をぬぐいきれなかったが、今ならば自信をもって瀬川に決闘を申し込める。こんな奴に負ける気は全くしなかった。
俺が条件を提示して決闘を申し込むと、やはりというか瀬川は金を要求してきた。
仕方がないが今は従うしかない。瀬川に依頼料を支払うことを約束し、4月29日から5月1日までの2泊3日の予定で決闘を申し込んだ。
瀬川は金が手に入るわ、その間はただで飲み食いできるわ、おまけに堂々と綾香を抱けるわで、夫である俺が目の前にいるにも拘らず無遠慮に興奮していた。
また、瀬川から、今の生活のことは一切明かさずに自分が実業家で裕福な生活をしているとすることや、依頼料のことも明かさないことを条件として提示された。
とりあえずは、その条件をものむしかなかった。
俺は後戻りがきかない賭けをしてしまったことに震えながらも、綾香の前で瀬川の化けの皮を剥がしてやる瞬間を想像して奮え立った。
俺が家に戻った時、まだ綾香は買い物から帰ってはいなかった。
まだ放置されたままの卒業アルバムの中の瀬川の顔をもう一度睨みつけているうちに、綾香が帰ってきた。
(続く)
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- 2012/07/05(木) 06:00:19|
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