[6993] 独身時代で一番辛い経験② ハニー 投稿日:2009/08/04 (火) 23:49
「次は~~○○~~~○○~~」車内の到着アナウンスが流れた。
栞の降りる駅である。
「助かった・・・涙・・・。。。」
痴漢男は自分たちのいる乗車口が今度は乗降側になっているのを知っており、急に今までの行動をすべて中止して彼女の体から数cm離れた。何食わぬ顔をして・・・。
ギギーッとブレーキの軋む音がして、プシュ~ッと駅に着いたドアが開く。
痴漢男は鮮やかにサッと身を翻して一番に降りるとホームの向こうへ消えて行ってしまった。
栞の全身を脱力感が襲った。
急に終わった悪夢の終焉をまだ信じられないといった様子でふらふらとホームへ歩み出ると乗車しようと並んでいる客の間にもつれ込むようになって近くのベンチに倒れこんだ。
顔は上気し、涙ぐんだまま・・・の彼女。よくよく見れば慌てて引き上げられたワンピースのファスナーがまだ胸元5cm程を残して開いており、少し乱れた感じが残っている。
しかし、忙しい朝の出勤前にそんな風な他人の些細な異変に気付くような人間がいないのが現代社会の構図である。そして、そこが彼女にとってある意味救いでもあった。
(恥ずかしい・・・。もう、、死んでしまいたい。。。)一瞬そんな想いが胸をかすめたほど、彼女の今朝の体験は乙女心をズタズタに引き裂いた。
オナニーさえ罪悪と想い自分で触れることも避けてきた体。。。
いつか愛する人の手で大切に優しく開かれていきたかった体の隅々を見知らぬ男の手で散々に汚されたのである。
栞はベンチに寄りかかり、ぼんやりと放心状態のまましばらく時をやり過ごした。
思い出すと・・・急速に吐き気がぶり返し、涙が次々とこぼれてきた。。。
「く、、悔しい。。。」
(もう、、今日は出勤できない・・・・。)はらはらと頬を涙が伝っては流れ落ちた。
そんな彼女にふっと気に留めた人物がいた。
たまたま東京からの出張でその日地下鉄を利用したサラリーマンであった。
(あれ?あんなところでOLかな?気分でも悪いのか?)
彼女の只ならぬ様子を心配そうに伺っていた。
今日の彼のスケジュールは先方の都合で午後3時からの訪問であるため時間が余っていた。
大阪の町を見物でもしようかと早めに新幹線で到着したのである。
そして彼はアメリカへの留学経験がある上、元々の優しい性格もあって、困っている女性を見過ごせるようなタイプではなかった。
朝の忙しい出勤状況でOLがベンチでぐったりして泣いているなど、よほどのことが彼女の身に起きているに違いない。そう思った彼は、シャイではあったが、つかつかと彼女のそばに近づいて声をかけた。
「大丈夫ですか?」
彼女は突然見知らぬ男の声を耳にして、心底驚いた。
またしても、、、あの痴漢が私を襲うために舞い戻って来たのだと咄嗟に勘違いした。
「いや~~っ!!!」
さっきまでほとんど声も出せずにいたくせに、今度ばかりは彼女は悲鳴をあげた。
びっくりしたのは彼の方である。
助けようと近づいて、いきなり大声を出されたのだから。。。;;;
無機質に通勤をしていた周囲の客もさすがにその騒ぎに気づき、数名がザワザワとした雰囲気を醸し出してこちらを見ている。
「ち・・・違うんです!!ぼ・・・僕は、、彼女が病気かと思って・・・声をかけただけです。。。」
慌てて手を振って群集に向かって全力で否定した。
彼女も、自分の前にいる男性がさっきの憎き痴漢男とはまったく違う人物だということにすぐに気づいた。
「す・・・すみません。。。。」
彼女はガバッと立ち上がり、真っ赤になってぺこぺこと頭を下げた。
しかし、ショックから完全に立ち直ったわけではなかった上、急に立ち上がり頭を上下に激しく振ったりしたためくらくらと目眩を起こしてまたしてもベンチにぺたりと座り込んでしまった。
彼は優しい性格だったため、もうちょっとで変態男の濡れ衣をかけられそうだった立場も忘れ、慌てて彼女を支えようと手を伸ばした。
彼女は全身にじっとり冷たい汗をかいており、本当に気分が悪そうである。
「だ・・大丈夫ですか?」心配そうに彼女の顔を覗き込んだ。
「す・・・すみません。。。。わ・・・私。。。」
そう一言いうと、また彼女はハラハラと涙を落とした。
(え??本当に病気なのか?泣くほどつらいのか・・・?)
彼は病院の手配を考えなければいけないかと思った。
その時、ハッと我に返った様子で、「会社に連絡しなくちゃ・・・遅刻しちゃう・・・」
そういうと、彼女はふにゃふにゃと脱力してベンチの背にもたれかかってしまった。
慌てて彼女を支えようと見守ったものの、彼にはまったく訳がわからなかった。
本当に気分が悪いのか、精神的なものなのか。。。
とりあえず、客観的に見て取れる状況ではこのまま仕事にいけそうにないことを彼女に素直に伝えた。
彼女は素直にうなずき公衆電話を使って上司に電話を入れた。
「すみません・・・。頑張って○○駅にまで着いたのですが、気分が悪くてホームで休憩してます。
はい。。。はい、、、ありがとうございます。ではお言葉に甘えて今日は一日お休みさせていただきます。
ご迷惑をかけます。申し訳ありませんでした。」
彼女が倒れてはいけないと電話の間中、彼女のそばで支えになろうと立って待っていた彼にも、電話のやりとりからなんとなく内容がわかり、彼女がとても評判の良い社員であることを理解した。
電話の応対や言葉使いも社員教育が行き届いていると感じた。好感のもてる女性である。
電話を終え、ひとまずホッとした様子をみせた彼女に彼は聞いた。
「どこか病院に行きますか?送りますよ。」
「・・・・・・別に、、、私・・・病気なんかじゃありません。。。」
彼女は青ざめた表情で下を向いたままポツリと応えた。
「え?でも・・・先ほどから、、かなり気分が悪そうですよ。。。遠慮ならしないでも大丈夫。僕、東京からの出張で今朝こちらに着いたんですが、先方との約束は午後3時なので今からどうやって時間を潰そうかと考えてたところなんです。」
彼は彼女が見ず知らずの自分に気遣っているのかと思い、丁寧に説明をした。
すると彼女はじ~~っと彼の顔を見つめ、今度はポロポロと泣き出してしまった。
「ええっ!!;;;」驚き焦ったのは彼の方である。
咄嗟に考えた彼は、「ちょっと時間がいりますね。何かあったんですか?静かなところでお茶でもしながら落ち着きましょう。。。」と彼女を慰めた。
彼女は見ず知らずの出会ったばかりのこの男性に不思議なことに父親のような兄のような安心感を感じていた。痴漢男に感じたような嫌悪感とはまったく異質の安心感である。
「すみません。。。私、すごく迷惑ばかり、、、涙・・・」そういってまたハラハラと涙を流す。
(困ったな~~~;;;苦手なんだよな~~女性に泣かれるの・・・。)
女に泣かれて嬉しい男性などいるわけもない。
「さ、この辺でどっか静かにお茶でも・・・・。あ、そうか、君、今日は休んだからあんまり会社の最寄駅でお茶なんかしてたらまずいね。」気の利く男性である。
彼はホームの壁の広告にシティホテルのランチとケーキバイキングの広告があるのを見つけた。
ここから2駅の場所である。
「ね。あのシティホテル。ケーキのバイキングだって。女性で甘いもの嫌いなわけないよね?2駅足を伸ばして行きましょうか。」と彼は優しく笑って提案した。
「実は僕もね、、甘いものに目がないんです。変な男でしょw(笑)」
爽やかな彼のジョークに思わずつらい体験を一瞬忘れてふふふ・・・と栞は笑った。
二人は2駅先のシティホテルに着いた。
そのホテルは全国展開の有名シティホテルチェーンのため、思った以上の落ち着いた雰囲気のフロントを構え、レストランもスカイラウンジも備えたちょっとしたものだった。
スカイラウンジが本格始動する夜までの間、ランチとケーキバイキングとして開放され、見事な景色の中で優雅なランチとティータイムを安価で楽しめることになっていた。
落ち着いた静かなクラシックの流れる中、栞はようやく今朝の恐怖を動揺せず思い返すことができるようになってきていた。
美味しいケーキと温かい紅茶、彼の東京の珍しい話なんかも相乗効果で彼女をリラックスさせてくれた。
「それで・・・どうも急病って感じでもないようだけど。。。僕でよければ何があったのか聴きますよ。」
甘いケーキが好きといった彼の言葉は決して嘘ではないようで、美味しそうにパクパク口に運びながら彼は聞いてきた。
彼女は目の前に座っている彼に話をするべきか大いに迷っていた。
優しい人だとはわかっている。
父のような包容力も感じ、とても好感を抱いた。
奥手の彼女にとって、初めての男性と二人でお茶をする・・・なんてこと自体ありえないことだったのだから、自分の行動にもびっくりである。
そんな彼に・・・今朝の悪夢を話してせっかくの和やかな場の雰囲気が消えてしまうのが口惜しいのである。
彼女の逡巡した様子を彼はとても気にしていた。
(何があったんだろう。。。)
出張で来て、突然出会った住む場所も環境も違う彼女。これから先のことを思うと、ただの知り合いのひとり・・・いや、それ以下にも等しい筈なのに。
(とても気になる。。。)
彼は自分の心がなぜこんなに彼女に惹かれるのかわからなかった。
恋・・・とはそんなものであるのに。
「言いたくないのなら無理しなくてもいいんですよ。。。ただね、僕、なんでだろう・・・。あなたの・・・いや、栞さんのことがすごく気になって心配なんだよね。。。」
急に『あなた』という他人行儀な呼び方から『栞』と下の名前を呼ばれて彼女はポッと赤くなった。
(可愛いな~~。。。なんかすごく純な人なんだな~~。)
彼もそんなに女性経験があるわけではないのだが、今までに付き合った彼女ぐらいはいる。
もちろん、ひととおり性行為のなんたるかも知っている20代の健康な成人男子である。
そんな彼が見ても、目の前の彼女は先ほど聞いた23歳という年齢、、実は自分とは1歳下というだけだったのだが・・・。もっと初心で年下に感じてしまっていた。
「栞さん。なにかつらいことあったの?僕と出会ったとき、ずっと泣いてたでしょ?はじめお腹でも痛いのかな~~って思ったんだよ。。。でも子どもじゃあるまいし、お腹が痛くて泣く人なんかいるのかって疑問だったけどね。。。(笑)」
彼の軽い冗談にまた栞は笑った。気持ちがふ~っと軽くなってゆくのがわかった。
(この人に話してみよう。。。きっと私のつらい気持ちを理解してくれる。。。)
栞はそう感じた。彼のすべてを包み込むような雰囲気が彼女を心から安心させてくれた。
「実は・・・。。。」
彼女は朝からの出来事をぽつり・・・ぽつり・・・と言葉を選ぶように話し始めた。
彼はまさかの衝撃の事実に声を出して驚いてしまった。
「そ・・・そんな奴が!!許せない!!」憤りが体の奥から沸々と込み上げてきた。
同じ男性として、いや、目の前の彼女のショックを憂う知り合いのひとりとして、まったくもって許せない卑怯な痴漢男の存在にはらわたが煮えくり返るような気がした。
彼女は話しながら、あのときの恐怖が再度よみがえったようなつらい表情をしている。
核心の部分は彼女の口からはとてもいう事などできず、、顔が知らず知らず赤くなってしまう。
(可哀想に・・・。)
彼は彼女が気にせずすべてを話して、楽になれるように淡々と相槌だけを打ちながら聴くことにした。
彼女は一生懸命話をしてくれた。話し終えたとき、またひと筋の涙がこぼれた。
「ご・・・ごめんなさい。こんな話聴いてもらってまた泣いちゃうなんて、、あなたになんの関係もないのに。。。もう終わったことだから。今度からは電車の窓際には立たないようにします!(笑)w」
彼女は笑って手を振り、もう気にしていないよ・・・といった感じの仕草をして誤魔化した。
しかし、かえってその雰囲気から彼女の受けた辱めの大きさが想像できてしまう。
彼は向かいのテーブルに座る彼女の頬にすっと手を伸ばし、涙をそっと拭ってやった。
「つらかったね。。。よく頑張って話をしてくれたね。もう大丈夫だから・・・。」
そう彼は慰めた。それしか、、いい言葉が見つからなかった。
すると、、急に彼女はまたポロポロ・・・と涙をこぼした。
彼は必死でつらい体験を隠そうと・・・なんとか自分の力で乗り越えようとしている彼女をいじらしく思った。
席を立ち、彼女のソファの横にスッと並んで座った。
自然と彼女の肩を抱いて慰めたくなった。
「もう大丈夫・・・。僕がいるよ。。。」
彼のその優しい行動とセリフに彼女はまた泣き出して彼の肩に顔を埋めた。
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- 2013/05/22(水) 05:45:57|
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