妻と男の物語


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息子の先生2・家庭訪問①

[7049] 息子の先生2・家庭訪問① tttt 投稿日:2009/08/12 (水) 09:48
 ふう・・・と、原賀秀子は思わずため息をついた。そして、涙目で自分を見上げる息子、隆を見下ろした。
 「いいでしょお、お母さん」
 「友達に誘われてるだけじゃないの?隆、あなたが本当にやりたいの?」
 「うん!」
 「ふう・・・」

 困ったわ・・・秀子はそうつぶやいてしまった。息子の隆が、学校の体育館で、放課後週二回行われている、柔道教室に通いたいといって、この数日、強情になって秀子を困らせているのだ。
 隆は痩せていて、丈夫なほうではない。むしろそういった教室に通うのはいい事だと、秀子は思う。ただ・・・。

 「牛尾先生がね、体育の時間にほめてくれたんだ。運動神経がいいって。もっと運動したら体が強くなるって。素質があるって」
 「・・・・・・」
 「だから、牛尾先生がやってる柔道教室に通いたいんだよ、お母さん。ねえ、いいでしょお!」
 「・・・・・・」

 そう、ただ問題なのは、秀子を困らせているのは、その柔道教室の先生なのだ。牛尾先生。昨年までの、健太が一、二年生の時の担任の先生だった、牛尾先生。そして、あの授業参観の時、秀子に痴漢行為を働いた男。
 あの授業参観の日、秀子は家に帰るとすぐにシャワーを浴びた。その時秀子は、自分の体をののしったものだ。染みになるほど濡れているパンティ-。そして、シャワーに反応してしまう体。
 
 秀子は、自身の体を男性に触られることは、覚えがないくらい、遠いことだったのだ。一年以上も海外出張中の夫とは、それ以前からセックスレスだった。その自分の肉体が、あの大きな手でお尻をまさぐってくる、ごつごつした指で内腿を割ってくる感触を、いまだにはっきりと覚えているのだ。そしてあろうことか、秀子の女性が濡れてしまうのだ。そんな自分の肉体が、秀子は恨めしかった。
 牛尾先生も、恨めしかった。授業参観中になんていう事をするのか。しかも、隆の担任だったではないか。その牛尾先生がやっている柔道教室に通いたいという息子が、恨めしかった。

 「ねえっ!お母さんっ、いいでしょっ!ねえっ!ねえっ!ねえっ!」
 隆が、涙を流しながら、秀子の服を引っ張り出した。息子が、こんなにも夢中に何かをしたいと訴えてくることなど今までなかった。おもちゃが欲しい、お菓子が欲しいという事じゃないのだ。
 秀子は、母親としての部分が、女の部分を勝ってしまう自分が、分かっていた。

 「わ、分かったわ・・・じゃあとりあえず、一ヶ月通ってみなさい。続かないようなら、それでもいいから」
 「お母さんっ、ありがとう!」
 しがみついてくる息子の頭を秀子は撫でた。そして、複雑な心境だった。できれば続かないほうがいい。でも、この息子の細い痩せた体。丈夫になって欲しい。強くなって欲しいと・・・。



 それから数日、学校から帰ってきた息子の隆に、一枚のプリントを手渡された。家庭訪問の案内だった。担任の安田先生が、訪問してもいい希望の時間を書いて提出するのである。
 秀子は、若い安田先生の優しそうな顔を思い浮かべた。相談してみようかしら・・・。あの授業参観の時の事を。牛田先生に痴漢行為をされた事を。そして、安田先生の困った顔が浮かぶのだった。
 まだ若い安田先生は、きっと困ってしまう。いやそれ以前に、信用してくれるかどうか。牛尾先生は、父兄から信頼が厚い教師なのだから。
 そして秀子は、家庭訪問の日を迎えた。

 午後の四時過ぎ、ピンポーンと、玄関のベルが鳴った。秀子は急いで玄関に向かうと。ドアを開いた。
 「こんにちは、お母さん。今日はよろしくお願いします」
 安田先生が、にこやかに顔を出した。
 「先生、いつも息子がお世話になっています。どうぞ、中に・・・!!」

 秀子は思わず、後ろに倒れそうだった。目を見開いて上を見上げた。
 「原賀さん、こんにちは。隆君のお母さん」
 
 安田先生の背後から突然、ヌッと背の高い男性が顔を出したのだ。牛尾先生だった。

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