妻と男の物語


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不能になった私(1)

[8432] 不能になった私(1) 安さん 投稿日:2010/01/08 (金) 15:39
土曜日の朝、飼い犬の散歩から帰ると、妻の憲子がドレッサーの前で入念に化粧をしていた。
「昼ごはんと夜ごはんは冷蔵庫に入ってるから、温めて食べてね」
私が部屋に入っても、妻は鏡から目を離さずにメイクに躍起になっている。鏡の中の妻は右目を閉じ、瞼の上に紫色のアイシャドーをたっぷりと塗り込んだ。
ようやく化粧を終えた妻は、ダブルベッドの端に腰を下ろしている私の目の前を通り過ぎ、クローゼットの収納棚から下着を取り出した。そして恥ずかしげもなくタオルガウンを脱ぎ捨てて素っ裸になると、脂が乗った豊満な肉体に下着を身に付けていく。
妻が選んだのは、私が1度も見た事がない黒の下着だった。
「彼ったら、下着は黒が好きだって言うのよ」
妻は嬉しそうに含み笑いをしながら、とても小さな黒い布切れをケバケバしい赤いペデキュアが塗られた爪先に通していく。軽く90センチを超えた巨大な尻肉の谷間に、紐と化した黒のTバックが食い込む様を、私は虚ろな目で見つめていた。

半年前、妻から別れ話を持ちかけられた。
結婚して17年、子供には恵まれなかったものの、私たち夫婦は幸せな結婚生活を送ってきた。銀行に勤める私は同期の中で最も早くに支店長になり、都内の閑静な住宅街にマイホームを建て、年に1度は夫婦2人で海外旅行にも出かけている。私は昔と変わらず妻を愛しているし、これからも妻への愛が薄れることはない。そして妻も同じ気持ちでいてくれていると思っていただけに、「私たち、別れましょう」と言われた時には、目の前が真っ暗になった。
その言葉以上に私がショックを受けたのは、妻が口にした離婚の理由であった。
「あなた、もう男の機能が駄目になっちゃったでしょう・・・」
私に遠慮して妻の声はとても小さかったが、私の両耳は妻の訴えをはっきりと聞き取った。
「私、これからの人生をセックス無しで過ごすなんてとても耐えられないわ」
妻は追い討ちをかけるようにそう言い、私は完全に打ちのめされてしまったのだ。

結婚10周年を迎えた年に、私たち夫婦は産婦人科を受診をした。結婚3年目ぐらいから子作りに励んでいたが、私たち夫婦は一向に子宝には恵まれなかった。そして妻が35歳となったこの年に、不妊治療で有名な産婦人科を訪れたのだ。
検査の結果、妻の体には何処も異常はなく、妊娠しないのは私の体の欠陥であると診断された。私たち夫婦は医師の薦めで体外受精などの様々な高度不妊治療を行ったが、結局どれも失敗に終わり、妻が40歳になった時、私たちは子供をあきらめることにした。
私は自身の肉体の情けなさと妻への申し訳なさから軽い鬱状態になり、精神科のクリニックに通院を始めた。妻はそんな私を献身的に支えてくれた。
幸いなことにクリニックに通って1年も経たないうちに私の症状は改善した。だがちょうどその頃から、私の男性機能が急激に衰えを見せ始めたのだ。
クリニックの医師は「薬の副作用でしょう。鬱の方はもう大丈夫だし、薬を飲まなくなれば自然に回復しますよ」と言っていたが、私の男の機能は回復するどころか日に日に衰えていき、そしてついに全く機能しなくなってしまったのだ。
夜の夫婦生活が成立しなくなっても、私の妻に対する愛は変わらない。私たち夫婦は精神的な強い絆で結ばれているという自信があったし、もちろん妻も同じ気持ちだと信じて疑わなかった。
妻は不妊治療と精神治療で私を支えてくれた。その妻から不能を理由に離婚を突きつけられた私は、女の情念の激しさに、ただ呆然とすることしか出来なかった。
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  1. 2014/01/22(水) 11:42:15|
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