妻と男の物語


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不能になった私(3)

[Res: 8437] 不能になった私(3) 安さん 投稿日:2010/01/08 (金) 23:39
ついにSMクラブに行く日がやって来た。
その日、妻はどういうわけか着物姿であった。妻は朝から美容院に行って黒髪を和服用のアップにセットし、帰宅すると桐タンスから着物やら長襦袢らを取り出して準備を始めた。
着替えを終えて1階に降り立った妻の姿を見て、私は放心状態となった。
いつもより少し濃い目の化粧を施し、社交パーティー用に仕立てた艶やかな藍色の小紋の訪問着を着こなす妻の姿は、支店長夫人の貫禄に溢れ返っている。半襟から覗くうなじからは熟女の色気がプンプンと匂い立っており、私は我が妻の姿に呆然と見惚れた。

私たちは行きつけのフランス料理屋でランチを食べた後、いよいよSMクラブへと出向いた。そのSMクラブは某駅から歩いて5分ほどの所にある高層マンションに事務所を構えていた。
事前に指定されていたコンビニエンスストアの前から電話を入れると、50メートルほど離れたマンションの入り口から40代の男が出てきて手招きしている。私たちはその男についてマンションに入り、エレベーターへと乗り込んだ。
狭い密室に妻と2人で閉じ込められた私の心臓が音を立てて脈を打った。私は胸の鼓動を抑えるために、震える唇から声を絞り出した。
「ここは普通のマンションじゃないか」
「はい。このマンションの6階の部屋を全て借り切って営業しております」
男は強い訛りが残った癖のある話し方で質問に答えた。
「各部屋を改造してプレイルームにしているんです」
プレイルームという言葉に妻は敏感に反応し、剥き出しとなっているうなじが、うっすらと桜色に染まった。

「この部屋で少しお待ちください。すぐにマダムが来られますから」
男は私たちを601号室に案内すると、そそくさと部屋を出て行った。
夫婦2人でソファーに座らされている部屋に重い空気が流れた。私はその気まずさに耐え切れなくなり、ソファーを立って部屋の中を見渡した。
単身者用の部屋は1DKの間取りで、私たちのいる10畳の洋室は窓を黒いカーテンが覆っていて、何とも妖しい赤い照明が室内を仄かに照らしている。
部屋には家具類などは一切置かれておらず、素っ気ないほどに殺風景だ。だがよく目を凝らすと、天井には不気味な滑車が吊り下がっており、壁には手足を拘束する革の手枷、足枷などが取り付けられている。そしてソファーと向かい合う壁一面には大きな鏡が組み込まれていた。
私は緊張から世話しなく部屋の周りを歩き回ったが、妻は凛とした表情を崩さずに、無言でソファーに腰を下ろしていた。
男が出て行ってから5分ほどして玄関が開き、マダムが姿を現した。
「いらっしゃいませ。私がこのクラブのマダムのエルでございます」
エルと名乗るマダムはボブウィッグの髪を金髪に染めた、30代後半から40代前半といった細身の熟女であった。マダムは穏やかな笑顔で私たちを出迎えてくれたが、薄い紫色が入った眼鏡レンズのその奥で、狐のように吊り上がった一重瞼の目が鋭く光っている。
「それでは奥様、まいりましょうか?」
マダムは妻に微笑みかけ、まるでダンスを誘う貴公子のように妻に右手を差し出す。
「・・・えぇ・・・」
妻は引き込まれるようにしてマダムに右手を預け、立ち上がった。
「ご主人はこの部屋でお待ちください」
マダムはそう言って、妻の手を引いて玄関から出て行った。私は1人、部屋に取り残されてしまったのだ。
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  1. 2014/01/24(金) 11:47:54|
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