妻と男の物語


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私の足元で…37

[2035] 私の足元で…37 わくわく 投稿日:2007/06/22 (金) 12:25
昨晩の酒と疲れが残っていたのでしょう、ふたりが帰って来たのさえ気付かずに寝入っていました。
「ねえ、なお」
早紀の声です。
私を覗き込んでいます。
「そろそろ起きたら」
「えっ?
今何時?」
「もう直ぐ、1時になるわ。
ねえ、涎出ているわよ」
「あっ」
こうして私が目を覚ましている間は、早紀は私の恋人です。
きっと桜井は、悔しい思いをしているに違いありません。
(勝った)
なんて小躍りしたくなります。
もう寝取られて、負けは決まっているのに。
いや、早紀の気持ちを、少しでもこちら側に引き戻したような気がして…。
「そうか、1時か…。
買い物に行かなくっちゃね」
ふたりがアパートを出たのは11時近くですから、美術館から寄り道もせずに戻って来たのでしょう。
と、早紀が、私を不安にさせることを言います。
「ねえ。
桜井さんに、ちひろのポストカード買ってもらっちゃった」
考えてみれば、19歳の乙女です。
嬉しそうに、目をキラキラ輝かせながら、パンフレットと一緒に大事そうにポストカードを持っています。
「見る?」
「ああ。
すみません、桜井さん」
ポストカード…。
安い買い物です。
でも私は、美術館の近くに住んでいるものですからいつでも手に入ると、早紀にちひろグッズをプレゼントしたことがありません。
1、2点で良い、さりげなく手渡せば、早紀の心をより惹き付けることも出来るのでしょが、それを分っていても実行できないところが私の未熟なところです。

食材の買出しに行くにも、パジャマの私は着替えなければなりません。
「じゃあ、外で待ってるよ」
と、早紀と桜井は、外に出てしまいました。
部屋を出て階段を下りると、ふたりはなにやら楽しそうに話をしていました。
「お待たせです」
近くにある、大きなスーパーに向います。
小売と言うより、業務用の品揃えが豊富で、1個当たりの量の多さはもちろん、珍しいものも置いてあるスーパーです。
早紀の得意なハンバーグの具材を買い求めます。
合挽き肉に…、逢引き?
なんでもそんな風に、結び付けてしまう私です。
タマネギ、パン粉、香辛料…。
サラダ用にレタスやトマトなど。
ドレッシングとしてオリーブオイルと、にんにく。
「帰りの電車で、匂い大丈夫ですか?」
「平気、平気。
それより元気つけなくっちゃ」
と、桜井です。
もしかしたら、明日の早紀との逢引きのために、精力をつけようと言うのでしょうか。

アパートに戻ると、早紀は支度にかかります。
と、桜井が、
「ハンバーグと言えば、ワインが良いかな。
食べながら飲まない?
流石に、今日は無理?」
「いや、大丈夫ですよ。
でも、昨日のワイン、残っていないですけれど」
「じゃあ、買ってこなくっちゃ。
俺、美術館行ったりしたから、少し疲れちゃった。
悪いけれど、買ってきてくれる?
赤ワインね」
と3千円ばかり渡されました。
「はあ。
何本買って来ます?」
「1本で良いよ」
「3千円のワインですか?」
「うん。
早紀ちゃんの手料理を頂くんだから、安いワインじゃ申し訳ないよ」
先ほどの、ハンバーグの食材費も桜井持ちです。

アパートから、駅前の酒屋までは、片道十数分掛かります。
買い物を入れて30分、その間に桜井は早紀を手篭めに、いえ、嫌らしいことを仕掛けるつもりでしょうか。
早紀の料理の進み具合を確認して、アパートを出ました。
戻った時、進み具合が変わらなければ、何かがあったと考えて良いでしょう。
自ずと、歩は速くなります。
「あれ~、お兄ちゃん。
また飲むの?
ああ、お客さんが一緒だったものね」
酒屋の親父とは、親しい間柄です。
なにしろ、常連ですから。
いつぞやは、ひとりで1升瓶入りの甲斐のみのりとか言う赤ワインを一晩で飲み上げ、飲み足りないと追加を買いに行って、
「悪いことは言わない。
そんな飲み方をしていると、肝臓を壊すよ」
と、ビール一缶しか売ってもらえませんでした。
酒屋は、ワイン専門店ではないため、高くて2千円までの品揃えです。
その中で、一番高いものを買い求めました。

帰り道、いつも見慣れた街並みが、急げ急げと急き立てているようです。
アパートと書いていますが、名前は一応マンションになっています。
風呂がないのに、マンションでもあるまい…。
階段を上り、私の部屋がある3階に辿り着きました。
中のふたりに帰宅を知らせるように、わざと足音を大きくして通路を歩きます。

ノックの後ドアを開けると、早紀は台所、桜井は座ってテレビを観ています。
料理も、予定通り進んでいるようです。
「買って来ました」

ふたりとも何もなかったかのような顔をしていますが、私が出た後直ぐに、キスをしたかも知れない、おっぱいを揉んだかも知れない、いや舐めたかも知れない、あそこを触ったに違いない、舐めたかも知れない、いや、入れちゃった?かも…と、矢継ぎ早にふたりの痴態が頭に浮かびます。

「出来るまで、テレビ観てて」
「じゃあ、ワイン飲んで待ってようか」
「冷えてないですよ」
「そうか…」
「3千円のワインがなかったので、残ったお金でビールも買ってきました」
「流石!
じゃあ、乾杯しよう。
早紀ちゃんも、飲もう」
「私、未成年ですよ」
桜井が笑っています。
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