妻と男の物語


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ドルチェヴィータ②

[2977] ドルチェヴィータ② 角笛 投稿日:2007/12/19 (水) 03:15
(2)
 「フミちゃん、駅前のクリニックに明日行ってみないか?」
「えっ? クリニック?」
孝太郎に問いかけられ、芙美子は大きく目を見開いて訊ねた。
「このあいだエッチな事をされたときのこと、あまり憶えていないでしょ?」
「えっ、ええ。ほとんど憶えていないわ」
頬を紅潮させて芙美子は答えた。本当のことであった。
 『強盗さま』たちに犯され、何度目かのエクスタシーを感じて以降のことがハッキリとは思い出せない。
というより、現実のこととして感じられない、と言った方が正確であろうか?
何が起こっていたかはだいたい把握しているのだが、夢でも見ていたような感じで他人事にしか思えないのだ。
自分はいったいどうなっていたのだろうか? と芙美子は考える。
 「駅前に『瓜生センシュアルクリニック』っていう所があるでしょ? あそこで一度カウンセリングを
受けてみようよ。一緒についていくから」
「わかった。受けにいくわ」

 『瓜生センシュアルクリニック』は駅前ビルの2階にあった。芙美子と孝太郎は、金曜の朝、
予約を入れずにクリニックを訪れた。そんなに大きくはないが、清潔感のある明るい雰囲気の診療所であった。
待合室に他の患者はいなかったが、しばらく待たされた後、診察室に通された。

 「ご主人さんですね? ご主人さんはそちらにお座りください。あなたが柏木芙美子さんですね?」
「はい」
「当クリニックの医院長――と言っても医者は私ひとりですが――瓜生真一と申します」
瓜生と名乗った男は30代半ばぐらいだろうか? 端正な顔立ちでとても背の高い男だった。
低音の声でゆっくりと言葉を続けた。
「あまり聞かれたことはないと思いますが、うちは『センシュアルクリニック(Sensual Clinic)』
と称していまして、官能に関する全般を対象にカウンセリングしています。セックスカウンセリングよりも
守備範囲が広いと考えていただきましたらよろしいかと思います」
「はっ、はあ……」
「それで、本日はどういった内容のご相談でしょうか?」
「ええ、あのう……」
 芙美子と孝太郎は、先日の出来事、特に官能の箍が緩んでセックスを貪り尽くした別人格の芙美子について
説明をした。普段貞淑な芙美子が、何がキッカケでああも淫乱になるのか?
二人の話を静かに聞いていた瓜生は、ときに頷きながらメモを取っていた。
 「だいたいのところはわかりました。これから確認の意味で奥さんにいろいろテストしたいのですが
よろしいでしょうか? 誤解されないように断っておきますが、かなりエッチでセクハラめいたことも
テストには含まれておりますので、ご主人の前ではいささか気が引けるのですが……」
「結構です。テストを行ってください」
瓜生に釘を刺された孝太郎は返事した。
「ご理解いただき、ありがとうございます。それでは始めましょうか」
そう言って笑みを浮かべた瓜生の顔は、笑ったコヨーテのようであった。
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