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[3732] 2年前、それから23 忠太郎 投稿日:2008/04/24 (木) 16:56
〔明日も……〕
「延長した分はいくら……」
「ああ、いえ、あの結構です。十分頂いてますから……」
遠慮深い娼婦である。男は感動した。
「じゃあ、僕の気持だから」
といって、3万円を出し、更に
「明日も同じ時間に来てほしい」
と5万円を出した。
明日も、通夜が終えてからホテルに戻る。でも、9時までに戻れるかどうかは分からない。
「あのう、明日はもう少し遅い時間になるかもしれませんが」
時間には正確な娼婦である。
「ああ、遅くなっても必ず来てほしい。待っているから」
「ええ、どうせ戻りますから大丈夫です……」
「戻るって? どこへ……」
「あ、いえ、あの、ああ、お店の方にです」
「お店って、この近くなの?」
「ええ、ちょっと秘密ですけど……」
“実は、事務所は、このホテルの中です。営業は明日で終わりです”とでも言いたかった。
“明後日も来てほしいって言われたら、どうしよう……”
悩む必要はない。明後日は告別式を終えてから新幹線で帰る予定である。それでも、何とかしてあげたいと裕子は思った。何とかしなくても良いのである。
思わぬ13万の小遣いができた。楽しませてもらった上に、小遣いまで貰える。
これなら、健次にも1回に付き、1万円くらいの小遣いを請求しても良いのではないか、只でさせるのは勿体ない。そんなことを裕子は考えていた。
「それでは、失礼します」
と、礼儀正しい娼婦が男の部屋を出たのは、夜中の0時を少し回った頃であった。エレベーターに乗り5階下のフロアーで降りた。
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- 2012/11/26(月) 16:55:06|
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