妻と男の物語


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芙美子の秘密①

[3998] 芙美子の秘密① 角笛 投稿日:2008/05/31 (土) 21:55
(プロローグ)
 三週間後に柏木孝太郎との結婚を控えていた吉村芙美子は、呑み慣れないアルコール
に苦慮していた。課で催してくれた自身の送別会ゆえに酒を断るわけにもいかず、
かなり酔いがまわっていた。結婚を機に退社することを決めていたので、この宴会で
最後という気持ちが、芙美子を大胆にさせていたのかもしれない。
 細身でスラリと身長が高く、それでいて胸や腰には適度なボリュームの肉がついた
メリハリボディの芙美子は、男性社員の人気の的であった。
瓜実顔の愛らしい美人で、ゆるやかにウェーブのかかった長い黒髪の芙美子は、
その性格の良さもあって女性からの人気も得ていた。
 体が熱く、だいぶ眠気を催してきていた。切れ長の目がトローンとしてきて、
いまにも閉じようとしたとき、一年後輩の安西環が声をかけてきた。
「芙美子先輩、眠ったらダメですよ。今日は主役なんですから。アーン、目を閉じたら
ダメですよ。もー」
 環の声は耳に届いているのだが、襲い来る眠気に抗う術を芙美子は失いつつあった。
相談したいことがあるので、という環の申し出を受け、今晩は彼女の部屋に泊まる約束を
していた芙美子であったが、眠ってしまっては話もできなくなる。帰途についた際にも
お荷物になってしまうという心配もあったのだが、睡魔には勝てそうになかった。
「アーン、ダメですよ、芙美子先輩。今日は話を聞いてくれるって約束なのに……」
 少し脱色して茶色みを帯びた縦巻きロングの髪を指先で弄びながら、
環はため息をついた。芙美子よりもやや小柄な環はスリムな体形をしていたが、
体形のわりに胸はけっこう大きかった。アーモンドの形をした瞳には精気が宿っており、
活発な性格と相まって同期社員からの人気も高かったが、環自身は一年先輩の芙美子と
気が合うようで、実際とても慕っていた。
 目の前を通り過ぎようとした男二人を環は呼び止めた。
「あっ、桂木くんと堀田くん。帰りに付き合ってよ。……違うわよ……。芙美子先輩を
私のマンションへ連れて帰るのよ。手を貸してってお願いしているのよ」
 環に呼び止められた二人は、最初イヤな顔を見せたが、用事が吉村芙美子の介抱に
係わるとわかるやいなや、表情が明るくなった。
「アーン、ダメよ、変なこと考えたら……。芙美子先輩は三週間後に結婚されるんだから。
わかってるの?」
 二人は、ハイハイ、と頷いた。
桂木啓佑、堀田学は、安西環と同じ23歳。三人はともにこの4月で満一年を迎えた
同期であった。入社満二年の吉村芙美子24歳の一年後輩であった。
桂木は中肉中背で優男タイプ、堀田はガッチリした体形の筋肉質タイプで関西出身。
安西環とはわりと仲の良い同期であった。
「送別会がお開きになったら逃げたらダメよ。ちゃんと手伝ってよ」
 環はしつこく釘を刺した。

(1)
 安西環のマンションは地下鉄を使えばそう遠くない距離にあった。
最寄の駅へ向けて環が先頭を歩き、桂木と堀田が芙美子を挟み込むように支えながら
後に続いた。
「あなたたち、芙美子先輩の体に触れることができて得したと思ってるんでしょ。
ダメよ、変なこと考えたら」
「何ゆうてるねん。わしらが何考えるっちゅうねんや。変なこと言わんといて」
 堀田が顔を赤くして環に抗議した。顔が赤いのは酔いも含まれているようであった。
「しかし、吉村先輩は爆睡状態だねェ。大丈夫かなあ?」
 力が抜けているため、骨がなくなったように柔らかい芙美子の体の感触に満足しながら、
桂木がつぶやいた。酔っ払いを運ぶのは一般的に面倒くさいことであったが、
芙美子なら別格であった。彼女に触れるチャンスなんて、そうめったにあることではない。
ましてや、三週間後に結婚して人妻になる女性であるから、このような機会は最後かも
しれないのだ。

 もうすぐ駅に着くというところで環の携帯電話が鳴った。着信先を確かめてから、
環は折りたたまれた携帯をおもむろに開き、通話を開始した。
「もしもし……うん、わたし……。何さ?……。えっ、そうなの……。ホント!?
わかった、すぐに行く……。うん、じゃあね……」
 素早く携帯を閉じると、環は桂木と堀田に向かって口を開いた。
「桂木くん、堀田くん、ゴメンね。用事ができちゃった……。彼とケンカしていんだけど、今電話で謝ってきたの……。俺が悪かったって……。直接会って謝りたいからって……。
ゴメンね、わたし、すぐに彼に会いにいきたいの。すぐによ!」
 桂木と堀田は口をポカンと開いて、ただ、環の言葉を聞いていた。
「……もともと、彼とのことを芙美子先輩に相談したかったのだけど、
もう解決しちゃったわ。ということで、ゴメンね。あなたたちだけで芙美子先輩を家へ
送り届けてちょうだい。頼んだわよ。ねっ、ねっ。ホントごめんなさいね」
 一歩的にまくしたてると、環は自分ひとりだけ地下鉄のホームへと降りて行った。

 とり残された桂木と堀田は、芙美子の体を支えながら、しばし呆然と立ち尽くした。
「安西のやつ、無責任だよな?」
 と桂木。
「ああ、信じられへんわ。ほんま、自分勝手なやつやなあ」
 と堀田。二人は、鳩が豆鉄砲をくらったときのような互いの顔を見合わせて苦笑した。
「安西はけっこうな美人でエエ体してるけど、やっぱり彼がおったんやなあ」
「おまえ知らなかったのか? 安西の彼氏自慢は、けっこう有名な話だぜ。
ところで堀田。おまえ吉村先輩の家がどこか知ってるか?」
「知らん」
「そうか、俺も知らん。家もわからんのに、どうやって送って行ったらいいのだ。
うーむ。困った……。吉村先輩は当分目を覚ましそうにないゾ」
「そや、桂木。おまえのマンション、ここからまあまあ近かったよなあ?」
「ああ、ここからだったらワンメータとちょっとだけど……」
「ほな、とりあえずおまえのマンションに行こ。それしかしゃーない」
「そうだなあ、そうするしかないか……。休憩してうちに目が覚めるだろうしな」
 二人と抱きかかえられた芙美子は、タクシー乗り場へと歩き始めた。
このとき、二人は無垢な気持ちで対応を考えていたのであって、まったく邪な気持ちは
なかったのである。タクシーに乗り込むと、桂木は運転手に行き先を告げた。

(続く)"Premarital Untold Story of Fumiko"
[Res: 3998] Re: 芙美子の秘密① 角笛 投稿日:2008/05/31 (土) 22:30
孝太郎と結婚する前に起こった芙美子の秘密のエピソードについてアップしていきます。
よろしく。
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