妻と男の物語


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悪魔のささやき15

[4862] 悪魔のささやき15 ナオト 投稿日:2008/10/08 (水) 20:35


「あ、あの、、あたし一応結婚してるんで、、」真由香が困り果てた表情で言うと、
「何中学生みたいなこと言ってるの?無礼講だよ、真由香ちゃん」と矢崎が意地の悪そうな笑みを浮かべる。
「ずるいわよ、真由香ちゃん。ほらブチューってやってよ!」ルミは口を尖らせて言う。
すると隣の大田が、まあ、まあ、と場を静めながら
「最初だからオマケしてあげようよ。これなら言えるだろ」と言って耳打ちしてきた。

その言葉は聞いたことはあるが、よく意味が分からなかった。真由香は開き直って口にする。
「ま、まつばくずし、、」
いっせいに三人がゲラゲラと笑い出した。
「へえー、真由香ちゃん、好きなの~?、松葉崩し」とルミが嬉しそうな声で言った。
「いやあ意外だなあ、真由香ちゃんが本当に言うとは思わなかったよ」
大田もわざとらしく驚いた表情を見せるのだ。


洗面所の鏡に映った自分の顔を真由香は見ていた。アルコールのせいでかなり赤い。
この店に入ってどれくらいになるのだろう。自分がなにか薄汚れたような気分だった。
身体から煙草の匂いと、大田の男臭い匂い、そしてもうひとつ別の匂いも染み付いている。真由香はハンカチを絞って身体を拭いた。足元がふらつく。

矢崎の提案した「下ネタしりとり」は、全て真由香が負けた。
矢崎は意地悪く「キ○タマ」、「イラマチオ」、「鈴口」などと、真由香には無縁の品性下劣な言葉を振ってきた。
そしてその度、隣の大田が「オマ○コ」、「マ○コ」、「チ○ポ」と耳元で囁くのである。
罰ゲームは耐えられないものだった。

頬でいいから、と言われてもいつまでもキスをためらっている真由香に、矢崎が出した二者択一は「春巻きキッス」である。さっき矢崎とルミが行った破廉恥な行為だ。
これだけは出来ない。唇は貴彦だけのものである。
「これも勉強だよ」真由香にだけ聞こえるように、暗にカウンセリングであると伝えられると、
酔った勢いにまかせ、真由香はしかめっ面で目を閉じ、大田の頬についにキスしたのである。

二度目の罰ゲームは「大田の股間を触る」。冗談ではないと再び拒否すると、またもや「春巻きキッス」を持ち出された。
涙目になっている隙をつかれて、大田が強引に真由香の手を自らの股間に押し付けた。
大暴れした真由香だったが、2~3秒は押さえつけられたままだった。
そして三度目ついに、「春巻きキッス」を出してきた。再度迫られる二者択一は「ルミと女同士のキス」。
迷わず後者を選んだのだったが、このキスがとんでもないものだった。

ルミという女は真由香の顔を両手で挟むと、初めこそ優しく唇を合わせていたが、しだいに舌で真由香の唇をこじ開け、舌を無理やり押し込んできたのだ。
抗う真由香の背中をがっしり大田に支えられ、前からは乳房を押し付けながら遮二無二舌を侵入させるルミに、
真由香はありったけの力でルミの手をほどき突き飛ばすと、逃げ込むようにしてトイレに駆け込んだのである。

もう帰ろう。うんざりだ。
大田の中高年特有の整髪料の匂い。それに混じってルミという女のツンとするきつい香水の匂いも身体に染み付いたままだ。
左手には大田の下半身の感覚も残っている。その股間は異常なまでに硬化していた。
ふたたび手をゴシゴシ洗う。
景色が回っているように見える。相当酔っていた。時計を見るとすでに7時半を回っていた。
真貴はもう眠っただろうか。早く貴彦の声が聞きたい。

ふらつく足でトイレから出ると、そこに矢崎が立っていた。真由香はギョッとしたが、怒りを込めた表情で言い放った。、
「あたし、もう帰らせていただきます」
矢崎は何も言わず、じっと真由香の目を見ていたかと思うと、いきなり真面目な声で言った。
「ご主人に電話してごらんなさい」
何を言い出すのか?真由香が不思議そうな顔をしていると、
「おそらくご主人は今、リラックスされている。それだけでも今日のカウンセリングの意味がありました」と言うのだ。

矢崎の言葉に真由香は無性に腹が立った。自分がいなくて貴彦がリラックスしている?
ふざけないで欲しい。
さっきから真由香は貴彦の声が聞きたくてしょうがなかったが、我慢していた。
いつもと違う自分のような気がして、貴彦と話すのが何となく怖かったのだ。しかし、矢崎の言葉にそんな気持ちも吹き飛んだ。
矢崎に見せつけるように、今から帰ります、とキッパリ言うつもりで携帯のボタンを押した。

呼び出し音が鳴る。一回、二回。
虚しくコールが繰り返された。
貴彦は電話に出なかった。
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