妻と男の物語


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悪魔のささやき17

[4923] 悪魔のささやき17 ナオト 投稿日:2008/10/13 (月) 21:26

突然隣りの席から女の泣き声のようなものが聞こえた。真由香が驚いて振り向くと、ソファに座っている男に女は跨り、腰を上下させていた。
スカートを捲り上げて男に背を向ける形で足を開いた女は、男の閉じた膝あたりに手を置き、自ら腰を淫らに揺すって性交を繰り広げているのだ。
仰天しながらも固まってしまった真由香は、相手の男と目が合ってしまう。
三十代半ばくらいの男は淫蕩に爛れた細い瞳をこちらに向けて、口元をニヤリとさせた。慌てて視線を元に戻すと今度は矢崎と目が合う。

「だめだよ、見なきゃ。」とニヤニヤしながら言う矢崎の言葉に血の気が引くのである。
他人の性交をまともに見られるような神経の真由香ではない。
しかし、女の次第に昂ぶっていく喘ぎ声は、いやがおうでも真由香の感情に突き刺さってくるのだ。
女性は同性の喘ぎ声に、自分の感情をシンクロさせてしまう特性を持っていることを矢崎は知っていた。
例えば女性が笑ったり泣いたりするときに、友人同士で手をつないだりする行動は女性特有のもので、感情を共有させてしまう習性があるのかも知れない。

これもまた、矢崎があらゆる悪事や女をこます為に人づてに学んでいったのであり、この男の狡猾さと恐ろしさの一端なのである。
真由香の心に、じっくりと時間をかけて拭い去ることの出来ない染みを作ってやるんだ、という気概のようなものが、そこには存在していた。

「ほら、すごいだろ真由香ちゃん。あんな風に腰を使うと男性は悦ぶもんなんだ。」
矢崎はまるで講師さながらに、因果を含めるような口の聞き方をする。
自分が上になって男を責めることだってちっとも恥ずかしいことじゃない、などと講釈をつけながら、見てごらんあの起ちよう、と見事に起立させた男の物を自慢げに指差すのだ。

ふと気づくとルミという女が見当たらない。トイレにでも行ったのか。その時、なにか隣りの大田の様子がおかしいことに気がついた。
何ということか。ルミもいつの間にか大田の足元で、露出させた大田のペニスを頬張っているではないか。
身体に電気が走ったようにビクリとした真由香は思わずのけぞり、その拍子にガラステーブルがひざに打ち付けられ、カクテルグラスが倒れた。
慌てて立ち上がろうとした真由香だったが、左側から矢崎が割り込むようにソファに座ってきて、真由香は大田と矢崎の間にサンドイッチされるような形になった。

「帰してくださいっ!」
真由香は強い口調で矢崎を睨みつける。なおも立ち上がろうとする真由香に、突然矢崎は驚くほどの大きな声を出した。
「いいかげんにしろっ!」
その声の大きさに、さっきまで隣りで喘ぎ声を出していた女も一瞬静まり返った。
真由香は目を丸くして、恐ろしい形相で睨んでくる矢崎に身をすくめている。
すると今までルミの口技に身を任せて恍惚としていた大田が、横からやんわりと口をはさんだ。

「おい、天城くん、穏やかじゃないね。女性にはもう少し優しく接してあげなきゃ駄目じゃないか。」と柄にもない言い方をすると、今度は真由香に向かい、
「真由香ちゃんも安心していいよ。ご主人にはこんな店来たことは黙ってるから」などと言うので、真由香は寒気がした。
自分達がこんな店に連れてきておいて何を言っているのか。これでは遠まわしで脅されているようではないか。

一方の矢崎はヘラヘラ笑いながら、まるで上司にゴマをする情けない平社員のような雰囲気で「い、いや、ハハハ、すみません。これは失敬しました。」と大田に謝ると、真由香に向かって今度は優しく諭すのである。
「いいかい、真由香ちゃん。これは君のためにやってるんだ。いや、もっと言えば旦那さんのためでもある。あと少し、そうだね10分でいい。我慢しようよ。」

ここに来てようやく真由香はこの男の本質を見た気がした。いくら酔っているとはいえ、気づかない真由香ではない。
さっきの矢崎の形相。うっかり覗かせてしまった矢崎の裏の顔に、真由香は目が覚めたのである。
人間のあんな恐ろしい顔と声は、真由香は生まれてから目にしたことはなかった。
この男は信用出来ない。たとえ鑑定士として一流であろうと、もう関係ない。
用心しなければ。とにかく家に無事帰ることが第一だ。酔った頭で、しかし真由香は冷静に対処を考えた。
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