妻と男の物語


スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告


悪魔のささやき16

[4887] 悪魔のささやき16 ナオト 投稿日:2008/10/10 (金) 21:31

貴彦が電話に出ないなんて珍しい。
いや、真貴を寝かせつけて、きっとお風呂にでも入ってるんだ。あるいは疲れてうとうとしてるのかも知れない。
案外わたしが外出してても気にならないのかな?真由香は少し寂しくなった。
「どうしました?ご主人と繋がりませんか」
「いえ、、手が離せないみたいです、、」真由香が嘘をついているのを見透かすように矢崎はニヤリと笑みを浮かべると、ふいに真由香の手を取った。
「何するんですかっ?」仰天してその手を振り払おうとするが、矢崎は離さない。

「奥さん、運命というものを信じますか?」何を言い出すのだ。
「離してください、何なんですかっ」
「運命では、ご主人とは別れることになりそうです」
(えっ?!)瞬間、真由香は全身が凍りついたように固まってしまった。
「しかし、運命を変えられないなら、私たちの仕事など意味がありません」

真由香の瞳は今にも涙が落ちそうに潤んでいた。
「貴女の顔を見たとたん、リラックスしたご主人の顔が浮かんだんです。これは良いことなんですよ。さ、場所を変えて、もう少しカウンセリングを続けましょう」


真由香はかなり酔っていた。
中華料理店を四人で出て、どこをどう歩いたのか、気がつくと雑居ビルの中の小さな店に入り、ボックスの席に座っていたのだった。
薄暗い店内には同じようなボックスの席だけで占められており、天井からはミラーボールが妖しく回っている。
真由香は紅茶を注文したつもりなのだが、出てきたのはカクテルグラスが四つ。
よく見るとどう見てもここは喫茶店などではない。窓もないし、スナックのようだ。
まあいい。真由香は深く考えるのが面倒になってきていた。

ここに来てからは打って変わって三人は寡黙だ。
矢崎とルミという女性の様子も、さっきまでのふざけてイチャついている感じとは違い、何か淫靡さが漂っているのである。
矢崎の耳に女が口を寄せ、ひそひそ話をしたり、クスクスと笑いながら真由香を二人で見つめたりもする。
最初は気づかなかったが、目が慣れてくるとボックス席には他にも何人か座っているのに気づいた。

どこも不思議とカップルばかりだ。隣の席から何やら妙な気配を感じた。
ゆっくりとそちらに真由香は目を移す。暗いのでよく分からないが、男性がソファに座ったまま、顎を上に向けて天井を見ている。
次の瞬間自分の目を疑った。男性の足元に女性がひざまづいていたのだ。
女性の顔は前後に揺れていて、ピチャピチャと何か卑猥な音が聞こえる。こういった事に知識のない真由香でも、女性が何をしているのか理解するのに時間はかからなかった。

ズボンのベルトを外し、股間から突出させている男性器を女は口内に出し入れしていた。
慌てて目を逸らした真由香は大田に抱えられていた腰を強引にすり抜けて、
「か、、帰らせてもらいますっ」と、席を立とうとする。
しかし、足元がふらついてすぐにテーブルに手をついてしまった。
「真由香ちゃん、これもひとつの勉強だと思わなきゃ。」
矢崎がすかさず声をかけた。中腰でテーブルに手をついたままの真由香の両肩を優しくささえ、うつむいた真由香の顔を下から仰ぐように見ると、
「こういうところで頑張らなきゃ、いつまでも変われないよ。」
と、ふいにカウンセラーに戻った顔でささやくのである。

いつまでも変われない、という矢崎の言葉に真由香は自分が今ここにいる理由を思い出す。
しかし、ここはいったいどういう店なのだ?本当にこれがカウンセリングなのか。
確かに占い師としては有能かも知れないが、この男は本当に信用出来るのかという疑問も、用心深い真由香の頭の中には残っていた。

矢崎の腕でソファに再び腰を下ろされた真由香は、隣りの席からは目を背けたまま、自分の気持ちを落ち着かせようと深呼吸する。
「ここはカップル喫茶といってね、セックスレスの夫婦や、マンネリ気味のカップルが刺激を求めてやってくる場所なんだよ。これも社会勉強のひとつだと思って見ておいて損はないから。」
矢崎が言うと、大田は真由香に身体を寄せ、
「そうそう、これくらいの免疫つけとかないと、お店に来る悪い男を捌けないよ。」
などと、分かったような分からないようなことを、真由香の手を握りながら嬉しそうにささやくのである。
関連記事

  1. 2012/12/25(火) 11:04:04|
  2. 悪魔のささやき
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0


<<悪魔のささやき17 | ホーム | 悪魔のささやき15>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://tsumaotoko.blog.2nt.com/tb.php/889-5ed0f78d
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)