妻と男の物語


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悪魔のささやき26

[5226] 悪魔のささやき26 ナオト 投稿日:2008/11/18 (火) 18:48

テーブルの上には何回かに分けて運ばれた寿司の皿が、数枚平らげてあった。
矢崎は三杯目のジョッキに入った。
真由香は初め全く手をつけなかった。ビールも一口二口喉を潤す程度だったが、矢崎がこっちまで白けると、しつこく促すので仕方なく口に運んだ。
矢崎の言う通り、店の外観に似合わず新鮮なネタに、旨いと感じてしまう自らの味覚を恨めしく思う。

会話はほとんど矢崎が一方的に喋っていた。ときどき矢崎の問いかけに、答える程度である。
しかし、その内容は真由香にとって苦痛だった。この前のように下ネタのほうが、しらばっくれていられただけ幾分ましかも知れない。
「旦那には上手いことごまかせた?」とか、「娘さんは託児所かい?」とか、
「旅行の準備するフリも大変だっただろ?」などと、真由香の心情を逆撫でするかのような、あたかも旦那の目を盗んで、自ら不貞を働く女に対するような会話を振ってくるのだ。
ジョッキを三杯空けたというのに、あまり酔っているようには見えない矢崎は立ち上がると、「オヤジ、冷酒持ってきてくれ」と階段から呼んだ。

ほどなく冷酒が運ばれると、「こっちこいよ」と矢崎は隣りに座るよう誘う。
真由香の表情がこわばった。悔しさでいっぱいになる。足が動かない。
「ほら、ぐずぐずしない、こっちこっち。」矢崎に腕をつかまれ引きずられるように、隣に座らされた。
そのとき、真由香のスカートの布地越しにブルーの光が点滅した。
ビクリと驚いたようにポケットに手を入れた真由香は、マナーモード着信を知らせる携帯電話を取り出した。

「誰からだ?」
矢崎の問いに無言のまま困惑した表情で視線を逸らす。貴彦からだった。
立ち上がって電話に出ようとする真由香の腕を矢崎は寸でのところで摑まえた。
「な、何するんですかっ!」
強引に携帯を取り上げ、液晶画面を覗き込んだ矢崎はにやりと笑うのだ。
「貴ちゃんって旦那か?」
「返してっ!」奪い返そうとする真由香の腕をつかんだまま、からかうような口調で言う。
「俺が出てやろうか?貴ちゃん、今あんたの奥さんと差し向かいで呑んでるところだって。」

真由香の表情から血の気が引き、身体が固まる。マナー着信のバイブレーターのブーン、ブーンという低い振動音だけがしばらく部屋に響いた。
「携帯はしばらく預かっとく。」
ここまで来て気が変わられちゃ困る。蛇のような執念深さを持った矢崎の冷静な行動だった。
やがて着信のバイブレーターが停止し、これで貴彦との最後の繋がりも奪われたのだと、真由香の全身から力が抜けた。

「さあ、これで気持ちの整理もついただろう?」
矢崎は不気味な笑顔で言うと、お酌してくれよ、と左手で真由香の肩を引き寄せながら、ガラス製のお猪口をつまむ。
真由香のブラウンの髪から、ほんのりシャンプーの匂いがする。
(まさに本物の素人主婦の匂いだ。水商売や風俗女の香水臭い匂いとまるで違う)
抱いた左肩の下の半そでの裾から、人差し指を少しだけ入れて肌の感触を楽しむ。
すべすべとして、少女のようだ。

矢崎に促され、四合瓶の冷酒を取ると、真由香は小刻みに震えながら、お酌をした。
グイッと一口で飲むと、そのお猪口を真由香に差出し、矢崎は冷酒を注ごうとする。
「吟醸だ。旨いぞ。」「あたし、、いいです。」固いこと言うなって、と強引に注がれる。
仕方なく真由香は、指で矢崎の唇の触れたお猪口を拭く。甘いさっぱりとした冷たい酒が喉を通る。
ふいに矢崎が左手を真由香の太ももに置いた。
ビクリ、と見る見る鳥肌が立つのを真由香は感じる。矢崎は無言で手酌しながら、左手で太ももを擦りだした。

真由香は正座しているのだが、座るとワンピースの裾は膝から10cmくらい上になる。
矢崎が撫でることによって、少しめくれる形になり、ミニスカートのように真由香の太ももが露わになった。
ストッキングを穿いてない生足のすべらかな感触に、矢崎はぞくぞくするような思いだった。
何という滑らかな肌だ。色も透けるように白い。平均的な体系だが、ムチムチとした太ももは母親としての逞しさを感じさせた。

無言で俯いている真由香に気をよくして、さらにスカートの中に手を入れようとしたとき、手の甲に何か滴る感触があった。
ふと見ると、真由香はキッと眉を凛々しくも上げたまま、ぽたぽたと涙を流しているのである。
その表情は、哀しい顔とかそういうものではなく、まっすぐに前を向き、清々しささえ感じさせるものだったが、涙の溢れ方はまさにこぼれるように、ぽろぽろ、ぽろぽろと、とめどなかった。

「おいおい、泣かんでくれよ。こっちまで気が咎めるじゃないか。」
矢崎は少しおどけたような口調で、そんなに嫌なら無理しなくていいんだぞ、と言う。
「全部、旦那に話すか。」
そう言われて、真由香は、はっとするのだ。
「大丈夫です。ただ自然に涙が出るんです。逆らってるわけじゃないです。」
真由香はきっぱりとそう言う。最初から感じていたが、この女は中々芯が強いと矢崎は思った。

普通の女性ならメソメソしたり、暴れだすところかも知れない。真由香は涙は流しても、声には凛として覚悟を決めたような響きがあるのだ。
「旦那にどうしても知られたくないのなら、むしろ俺には感謝してもらいたいくらいなんだ。あんた、風俗嬢にされるとこだったんだぞ。
一晩、何もかも忘れて俺のものになれば全部解決するんじゃないか。」
矢崎は、実に優しげに諭すように言いながら、しかし口調とは裏腹に、ゆっくり真由香の白いシフォンのスカートの中に手を入れていく。
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