妻と男の物語


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伯爵からの招待(14)<了>

[6066] 伯爵からの招待(14)<了> 角笛 投稿日:2009/02/09 (月) 17:02
28 〝女王さま〟降臨

 新生児室の赤ん坊はスヤスヤとよく眠っていた。赤ちゃんの様子を確認したあと、私と美和と伯爵は談話室に向かった。美和は産後の肥立ちもよく、とても健康そうな顔色をしていた。
「今日はわざわざのお見舞い、ありがとうございます〝伯爵〟」
「美和、〝伯爵さま〟に失礼だろ。どうして〝伯爵さま〟と言わないのだ?」
「あら、伯爵は伯爵よ。それ以上でもそれ以下でもない。ねっ? 伯爵」
「どうやら彼女は、もう私の威圧に屈することがなくなった、ということを強調したいようだね? そういうことだろ?」
「あら、ものわかりが早くて結構ですわね。そうよ、あなたは伯爵。わたしの支配下にあるのよ。おわかり?」
 美和は上から見下ろすような視線で私と伯爵を見ながら、唇の端に笑みを浮かべていた。
「わたし、伯爵には感謝していますのよ。伯爵一族に伝わる優秀な遺伝子をわたしに提供してくれたことを。そして、わたしの失われていた記憶を生理的にも、精神的にも思い出させてくれたことを」
 美和は乾いた唇を舐めてしばらく沈黙した。そして、ニコッと笑うとこう言った。
「わたしは『人類史上最も優秀な遺伝情報を継承した一族――母系で密やかに守り続けられていた一族――の末裔』なのよ。いい? あなたが〝伯爵の力を誇示する一族の末裔〟なら、わたしはさしずめ公爵、いいえ、〝王の力を受け継ぐ一族の末裔〟とでも言っておけばよいかしら。私の精神と肉体は、最も誇り高く淫乱な一族の力を備えているのよ」
 美和はいつのまにか仁王立ちで私と伯爵の前に立っていた。

「心配することは何もありませんわ。今までどおり、普通に暮らしていけばいいのよ。伯爵は〝冴嶋部長〟として私たちの上司であり、また、〝伯爵〟という私の配下でもある。あなたはわたしの〝夫〟であると同時にわたしの忠実な〝しもべ〟。何もむずかしいことはないでしょ? あなたたちはわたしの命令どおりに動けばいいのよ。受精適期――発情期――になると無性にセックスしたくなるから、そのときはあなたたちにいろいろ協力してもらわないとね。あなたは夫だけど、わたしはあなただけに縛られる気はないから。もちろん愛しているわ。たぶんこの世でいちばんね。でも、それとセックスは別よ。ひとの『倫(みち)』を外したくなるときには、思う存分羽目を外すつもりよ。淫靡で妖艶で退廃的に。快楽と悦楽に満ちた官能の世界に。ああ、いまから楽しみだわ。わたしのあたらしい未来」
 美和は、空の向こうの彼方を見つめているような視線で天井の隅に顔を向けていたが、私と伯爵に向き直って言った。
「これからわたしたちだけのときには、わたしのことを〝女王さま〟と呼んでちょうだい。いやねえ、SMの女王といった変な意味ではないわよ。文字どおり、正真正銘、あなたたちを統べることのできる最高の〝女王さま〟よ。いい? わかった!?」
 私と伯爵――冴嶋部長――は、美和の前で頭を垂れて恭順の意を示した。この瞬間から、私も伯爵も、佐伯美和を信奉する忠実な〝しもべ〟となった。

 私、佐伯亮輔にとっては、これからも美和とその娘――〝女王さま〟と〝伯爵〟の血を継ぐ女――に翻弄される日々が続いていくわけだが、淫蕩にして芳醇な快楽に満ちたその物語について話すのはまたの機会に譲るとしよう。

<伯爵からの招待:了>
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  1. 2013/08/20(火) 05:49:53|
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