妻と男の物語


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潜在意識12

[2338] 潜在意識12 未熟者 投稿日:2007/08/21 (火) 22:42
山田は団地の空き地に車を止めた。
宅地にされているが売れ残ったのだろう。
丈の長い草が生えている。
時計を見ると9時28分と表示されて
いる。
「まだ早いな」つぶやくと同時にFMラジオの
スイッチを入れた。
全く音は聞こえない。周波数の合ってないラジオ
の雑音さえもしない。
「何も聞こえないな」山田はスピーカーから何の
音も聞こえないことに一抹の不安を覚えた。
「気長に待つか」
山田は窓を少し開け、タバコに火をつけた。
タバコを吸い終えるとシートを倒して仰向け
になるとうとうととし、そのまま眠りこんだ。
「ブォーン」という音で目を覚ました。
車のデジタル時計は10時22分を表示している。
スピーカーから「ゴー」「ブォーン」と音がする。
「何の音だろう?」
山田は音の正体を探ろうと耳をそばだてた。
あまり大きな音ではないが鳴り続いている。
「ヒューン」という音とともに消えた。
「掃除機だ。スイッチ切ったときの音だ」
「そうか、掃除をしていたんだ」
山田は倒していたシートを戻しボリュームを
目一杯に上げた。
パタンとドアを閉める音が聞こえた。
パタパタとスリッパで歩く音がする。
音がだんだんと大きくなってきた。
「カチャ」ドアノブをまわす音がした。
今までの倍以上の音がするため
上げていたボリュームを下げた。
スリッパで歩く音やカチャカチャと
何かが当たっているような音がする。
「ブォーン」再び掃除機の音が今度
は轟音のように聞こえる。
「最初の掃除機の音は小さかった。ドアを閉める
音もそうだ。だんだんと大きくなっていった
スリッパの足音とギュギュと軋む音がしていたのは
階段を登る音だ」。
山田は音を聞きながら、推測を始めた。
「そうか、2階にあるのか」
「2階なら可能性は高いな」
15分ほど轟音は続いた。
ドアを閉めると音がして、
階段を下りる足音がした
後は、また静寂が戻ってきた。
「家の外でも結構いけるな」
山田は2週間前に自分住むマンションで
テストした。
マンションの駐車場から少し車を移動させ、
FMラジオの周波数を合わせて自分の部屋の
テレビの音を確認した。
54ミリ×85ミリ、厚さ6ミリ、
半径15メートルの会話に対応。
山田はネット販売で買った
小型発信機のテストに満足した。
翌日、山田はテストをした
小型発信機を持って出社した。
富士子は昼前に自費出版の
依頼者宅へ出かけた。
食事を終えた山田は
まだ誰も居ない職場に戻ると
富士子の机の下のダンボール箱の
原稿の下あたりに発信機を入れた。
富士子が発信機を見つけても、
自分が入れた証拠はない。
後はいつ富士子がダンボールを
持って帰るかだ。
山田は期待と富士子が発信機を
見つけはしないかという不安に
心臓が高鳴った。
(つづく)
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