妻と男の物語


スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告


誘惑5

[301] 『誘惑~最終話~』 かおり 投稿日:2004/07/03(Sat) 19:58
私は彼に抱かれた後、平然として家に帰って来ました。
光など灯しもしない、私にとって残酷な世界への入り口でした。
でも、私は幸せでした。

「ママ、起きてパパが帰って来たよ。ママぁー!」
「んっ…。今何時?」
娘に揺すられながら私は体を起こしました。
「10時だよ。ママ最近どうしちゃったの?」
「1…10時?えっ、パパ何処に居るの?」
「もー、ご飯食べてるよ。早く起きてきてね。」
私は母親失格です。
この世界からこの家から全て消す事が出来るなら、私は何より1番にそんなことを望むだろう。
「遅いぞ!」
旦那の声だ。
「ごめんなさい。ちょっと風邪気味で。。。」
思い付きの嘘。
「風邪ならもっと寝てろよ。ほら、こっち来てみな。」
旦那の手が私のおでこに触れた。それは、冷たくてひんやりする手だった。
「ちょっと、熱っぽいな。子供の事なら俺が見てるから礼子は休んでな。」
「うっうん。ありがと…ごめんね。」
何に対しての誤りなのか…。
私は複雑な思いでいっぱいでした。
コンコン-…。
「礼子?大丈夫か?ほら、お粥作ったからちょっと食べてみな。」
旦那のお粥はとても美味しい。
「本当にごめんね。」
「いいんだよ。風邪引いた時はお互い様だろ。」
私は旦那の作ったお粥を口の中に入れた。でも、熱くて少し吐いてしまった。
「おい、大丈夫か?」
何を思ったのだろうか…。旦那が私に触れてきたのだ。
「パパ?」
旦那の手の先は一直線に私の胸に触れている。
「ダメだってば…。」
抵抗したけれど、男の力。勝つはずもない。
「本当にだめっ…。」
頬、唇、首筋…旦那は堰を切ったような激しさで私をせめた。
でも、私は拒否るしか出来なかった。何故ならば、私の胸の上に恭平君のキスマークがくっきり付いているからだ。
まさか、旦那が私を抱くなんて予想もしなかったため彼がキスマークをつけるのを拒否らなかったのだ。
必死にパジャマを脱がさせまいと手を覆った。
でも、とうとう旦那は私の胸元を見てしまったのです。
「なっ…なんだこのマークは…。」
旦那は、驚いている。それも、そのはず。もう、何ヶ月も旦那とはしていないため旦那のマークではないということはわかりきっているはずなのだけど…。
「こっ…これは…。」
「答えろ!礼子!!」
旦那のさっきの優しさは消え、怒り爆発していた。
「ごめんなさい-…。」
私は、恭平君とのことを全て話しました。

「本当にごめんなさい。…もう、私と別れて下さい。」
私は精一杯の償いの言葉を出した。
「俺と別れてその男と一緒になるつもりか?」
私は首を横に振りました。
「何故?」
「一緒にはなれない。私は、私の周りの人達を不幸にしてしまったわ…。それなのに、私だけ幸せにはなれないわ…。」
旦那は何も言わない。でも、離婚は成立してしまった。私は、幸せから一気にどん底まで落ちていったのである。しかし、これが私の現実。受け止める他何もならない。
私は、恭平君にも『さよなら』をしました。彼へ連絡先も報告せず、私は姿を消しました。子供とのことは、旦那が引き取る事になりました。

私は自分が犯した罪で何もかもを失ってしまったのです。大切な大切な子供さえも…。

あれから、早6ヶ月が経ちました。私はというと、友達の紹介でバイトを始めました。旦那とも恭平君からも連絡は途切れたままであった。
私は過去を見まい…早く忘れようと考えても浮かんでくるのは幸せだったあの頃ばかり。もっと早く気付いていれば良かった。幸せは幸せな以上望んではいけないということに…。私はきっと、夢を見すぎたのだろう-…。

夕暮れの風に吹かれながら、私はいろいろな事を考えながら歩いていた。
そして、その前から…。
「礼子さん!」
なつかしきの声が私の耳に入って来た。
振り向くと、恭平君が立っていた。
「恭平…君…!?」
私と彼は同じ息を合わせ、お互いに向かい走り合った。
彼は、手を伸ばして私を大きく受け入れてくれた。
そして、抱き締め…。
「結婚しよう。僕と結婚しよう。もう、これ以上悲しい思いはしなくていいから。もう、礼子さんは幸せになってもいいから。僕と同じ道を歩こう…。」
「うん。」
私は、涙を流しながら彼の言葉に縋り続けました。

『幸せ』なんかじゃなくてもいい。ただ、一日一日が楽しいと感じあえるなら。
きっと、未来は見えないからこそ私達は幸せでありたいと望んでしまうのだろう。
でも、それは違う。
愛し合って・愛されて、それが幸せになる条件なのではないのだろうか-…。

「愛してるよ。」
「愛してる…。」

~Happy End~
関連記事

  1. 2012/06/22(金) 06:00:49|
  2. 誘惑
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0


<<出来たての未亡人 | ホーム | 誘惑4>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://tsumaotoko.blog.2nt.com/tb.php/89-739afdf5
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)